赤き実

そのかみの 幼き夢は
故郷の 川の岸辺に
わが母と 二人でつみし
一ふさの 淋しきいのち
赤き実よ
丸(まる)い小さき 赤き実よ

くれないに 燃えし木の実は
山奥の 暗き川辺に
ほっそりと 一人みのりて
淋しさに もだえかなしむ
赤き実よ
丸(まる)い小さき 赤き実よ

行えなき 波のまにまに
まかせつゝ 赤き木の実は
波風の 荒きさだめに
むせびつゝ 母の名よびし
赤き実よ
丸(まる)い小さき 赤き実よ
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