空虚壕

寒い 痛いよ 暗い 狭いよ
広い いないよ きみが

なぜに空は悲しい時も
なぜに空は美しいの

寒い 痛いよ 暗い 狭いよ
したい いないよ きみが

どんな顔で笑えばいいの
どんな顔で泣けばいいの

あの日きみは突然言った
今なら空を飛べる気がする
駆けて行った 螺旋の階段を
そしてきみは 鳥になった
僕の目の前で

はじめはね、まったく飛べなかったの。
地面を蹴っても、すぐ砂利の上に叩きつけられて。
それが、日ごとに少しずつ、
ふわり、跳ねられるようになったの。
最近じゃ、気持ち良くて気持ち悪くなるくらい、
山とか川とか、ビルとか鉄塔とか、
嘘とか幻想とか感情とか常識とか、
驚くほど優雅に越えられるの。

眼前に広がるのは、不機嫌な生活記号の群れを、
悠々と見下ろす未開封の空。

籠の鳥は恋をしました。
無限の空に恋をしました。

空に抱きしめられたくて、もう必死。

目標は、自由の鳥になることです。

あたしは、現実の外側で、
心もカラダもどんどん成長しています。

生き生きと、いつしか空とひとつになって、
真っ白な卵を生むのです。

ヒナの色、何色だと思う?
あたしのヒナの色、何色だと思う?

夢を孕んだ空色かな。
綺麗な綺麗な空色かな。

あの日きみは突然言った
今なら空を飛べる気がする
駆けて行った 螺旋の階段を
そしてきみは 鳥になった
僕の目の前で

あの日きみは突然言った
今なら空を飛べる気がする
駆けて行った 歓喜の声上げて
ついにきみは 鳥になった
僕の目の前で
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