雨音

雨の日ばかりが続くので、あの人の家を訪ねてみました。
あの人の家は急に潮の香りの強くなる岬の側にあって、
低い雲のたれこめた今日は、
細かな雨粒からきりもなく海に消えてゆくのです。
呼び鈴をふたつ。それから少しお行儀悪く門の中をのぞきこんで、
どうしてこんなに好きなんだろう。傾けた水色の傘に問いかけてしまう。
けれどあの人は困ったようにドアをあけて、
今日の雨よりも寒い目でドアをあけて。
私は用意していた笑顔も、練習していたさりげない言葉もなくしてしまう。

雨音しか もう聞こえない

風にまかれて やせた木の葉が舞う
季節の移ろいのただ中
あなたの笑顔 胸に抱く道は
いつも寒くはなかった

濡れて飛ぶ 海の翼に
果てもなく 雨は続く

生まれかわり 出会いたい人

やがて誰もが 家に帰るでしょう
あなたは誰のもと 帰るの?
どんな噂も怖くはなかった
私がにじむ雨音

やがて誰もが 家に帰るでしょう
私は誰のもと 帰るの?

あなたの笑顔 胸に抱く道は
いつも寒くはなかった
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