路面電車

雪どけの季節になれば 想い出します
路面電車で街はずれ
梅見に行った あの日の朝を
あなたの髪は まだ短かくて
トックリのセーターよく似合っていました
何を話したのでしょうか
(白い吐息で)
何を意味したのでしょうか
(梅のかんざし)
季節の流れは ふたりの心まで
変えてしまったの……。

あの頃の写真を見れば 想い出します
さりげない様に 待ちあわせ
坂の途中の貸本屋さん
あなたはいつも 立ち読みしてて
まるめた背中 とても寒そうでした
何を読んでいたのでしょうか
(その時あなた)
なんて声かけたのでしょうか
(私の言葉)
季節の流れは ふたりの心まで
変えてしまったの……。

路面電車も 貸本屋さんも
いまはないこの街 いまはないこの街……。
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