よこはまメランコリー

月日の流れはうたかたの夢。
他人の夢に関(かゝ)わる事なく、人は生きて参ります。
それでもこの町には今も……どこかで女のしのび泣き。

本牧裏通り 灰色かもめ
雨でもないのに 何を泣く
酒場は早終(はやじま)い 酔いどれ女
あかりを消したら すゝり泣く
だれが悪いと言うのじゃないが
アメリカ名前のあの男
………もう帰らない、そうさ
よこはまメランコリー

外人墓地裏に 名もない花が
風でもないのに 闇に散る
船なら出て行った ふられた女
名残りのスカーフ 引き裂いた
だれが悪いと言うのじゃないが
エジプトたばこを呉れた奴
………もう帰らない、そうさ
よこはまメランコリー

海岸裏通り 古ぼけホテル
霧でもないのに とじる窓
潮風ほろにがい 淋しい女
霧笛をきき乍ら ひざを抱く
だれが悪いと言うのじゃないが
あしたの望みは消えたまゝ
………もう帰らない、そうさ
よこはまメランコリー
×