オオカミ少女I

少女は橋の上 オオカミみたく吠える
月に逆らって 勇み足で行く
少女は月を恨む 1人泣けないまま
それでも見渡す 空の向こう側

雨が降り出して それが涙になる
からだ震わせて 少女は歓喜に泣く

船を探さなくちゃ
町を渡るため

だんだん深くなる 水たまりの町

やがてこの町は ぬるい水の海
少女の涙が 曖昧に映し出す
ゆがんだ視界に 手を差し伸べる人
優しい手つきで 水をかき分けてゆく

息が苦しくなる 気づけばまた1人
泣いて叫んだ それしか知らない
人のぬくもりも 生きることさえも
何処へ行けば 手に入るものなんだろう

2人の老婆が青空見つめてる

雲さえ見当たらぬ 眼鏡橋の上
昨日の晩のこと オオカミみたいな犬が
町の真ん中で息絶えてたそうだ

あら、可哀想に この日照りだもの
それより聞いてちょうだい もうじき4月でしょ
ほら、前に話した孫娘のリリー
あの子にぴったりの赤い靴みつけたの
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