生きてわかることがある

茜雲(あかねぐも)を仰ぐ
梢(こずえ)にゆれる葉音
名もない鳥の群れ
滲(にじ)んだ尾根の彼方

散りゆく花は
季節を永遠(とわ)に渡る
去りゆく者の
思いを木霊(こだま)にして
いのちがもしも
旅だと言うのならば
ここは何処(いずこ)

なぜか人が夢に沿う(そう)字は
なぜか儚い(はかない)と読むのですね
けれどそれは朧(おぼろ)ではなく
一度きりの実りなのですね
生きて 生きて
生きてわかることがある

月影に吹く風
川面に落葉の舟
虫の音は古(いにしえ)
心を運んでゆく

夜空に満ちる
瞬きただひとつも
届かぬものと
知りつつ手を伸ばして
いのちが道を
繋ぐと言うのならば
いまはやがて

なぜか人は憂いそこから
なぜか優しくなれるのですね
そしてそれは標(しるべ)のように
絶えず続く祈りなのですね
生きて 生きて
生きてわかることがある

なぜか人が夢に沿う(そう)字は
なぜか儚い(はかない)と読むのですね
けれどそれは朧(おぼろ)ではなく
一度きりの実りなのですね

歩きながらただ空を見て
歩きながらただ風にふれて
過ぎてみれば道は一筋
遠く近くただ伸びてゆく
生きて生きて
生きてわかることがある
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