東京紅葉

近頃 君の夢ばっか見て 寝起きどうも切ないから
近頃 俺 いっそ寝んのやめた
目ん玉血走って 若干よろめきながら
狭っ苦しいラーメン屋につづく だだっ広い大通り
傘の先っぽでつついております

どうにかこうにか ちょっといいとこ見せたい訳だが
いかんせんヘタレ ようやく見据えた未来さえ
ご丁寧にてめえで勝手に セピア色にしちまう体たらく
ポツポツ降り出して いよいよ惨めです…

灰色の空に向かって
ややガン飛ばし気味の角度で鋭く硬直する一輪の花の姿に
何故か強烈な嫉妬を覚え
大人気なくそいつを思い切り踏んづけてやれば
感情のかけらもないBB弾みたいな冷たい雨は
この軟弱な36.5度の情熱を蜂の巣にせんばかりだ
気でも違ったか 己に往復ビンタ
秋でもないのに頬に赤い紅葉

近頃 君の夢ばっか見て 寝起きどうも切ないから
近頃 俺 いっそ寝んのやめた 
したたかに酔って 大いによろめきながら
しつこい悪友ようやく振り切り
無駄に明るい繁華街 千鳥足で踏んづけております

「分かってんならさっさと直しなさいよ」と
ぼちぼち限界か 何処からともなく君の声
三日月の如き前傾姿勢で “お好み焼き”二つ
いよいよ惨めです…

重ねれば重ねるほど 薄っぺらになっていく
その不可解さに首を傾けながらも
愚乱愚乱の週末の夜に 今更 後には退けんと
半ばやけっぱちに夢をぶっ放せば
改札口を中心にとぐろを巻く 激烈な時の流れは
この軟弱な365日の叫びを粉々にかき消さんばかりだ
気でも違ったか 己に往復ビンタ
秋でもないのに頬に赤い紅葉
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