最終電車

あなたを乗せた最終電車がホームにすべりこんで
溢れる人の波 見なれたチェックのシャツ
あたしのおでこに手をあてて笑う 「前髪がのびたね」って
いつも受話器越しの声 今日はとなりで聞けるんだね

月明かりの下で はんぶんこした缶コーヒー
しあわせはこんな路地裏にもあるよ
あなたとならば

世界中の花がいっせいにひらく瞬間があるなら
きっと今なんじゃないかな
「おかえりなさい」あたしはいつでも待っているよ

会えなかった時間うめるようにとなり同士おしゃべり
気づかなかったこの部屋の狭さ 明るくなった窓の外

さみしさ紛らわすために 塗りつぶしたスケジュール帳
忙しくしてても忘れたことないよ
あなたはどんな気持ちでいたの?

会いたいと泣いた夜も ため息でむかえた朝も
いつか終わりがくるから
「おかえりなさい」あたしはいつでも待っているよ

時計の針はあせったように刻む
テーブルには空っぽの缶コーヒー
さよならは何度繰り返してもなれないね

世界中の花がいっせいにひらく瞬間があるなら
きっと今なんじゃないかな なんて…
「いってらっしゃい」あたしはいつでも見送るよ

あなたを乗せた最終電車がホームの向こう消えていく
あたしはうつむいて歩き出すよ
悲しみに暮れる街 見ないように
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