オホーツクの舟唄(知床旅情)

何地から 吹きすさぶ 朔北の吹雪よ
わたしの胸を刺すように
オホーツクは 今日も 海鳴りの中に
明け 暮れてゆく

父祖の地のクナシリに
長い冬の夜があける日を
白いカモメが告げるまで
最涯の茜の中で わたしは 立ちつくす
何故か 眼がしらの涙が凍るまで

オホーツクの海原
ただ白く凍て果て
命あるものは暗い雪の下
春を待つ心 ペチカに燃やそ
哀れ東(ひんがし)にオーロラかなし

最涯の番屋に 命の火チロチロ
トドの鳴く夜は いとし娘が瞼に
誰に語らん このさみしさ
ランプの灯影に 海鳴りばかり

スズランの緑が 雪解けに光れば
アイヌの唄声 谷間にこだます
シレトクの春は 潮路(しおじ)に開けて
舟人のかいな 海に輝く

オレーオレー オーシコイ
沖の声 舟唄
秋あじだいエリャンサ
揚げる網ゃ大漁
霞むクナシリ 我が故郷
何日の日か詣でむ 御親の墓に
ねむれ静かに
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