霧笛の宿

霧笛がしみます 雪の夜
わたしはあなたの 腕のなか
夢も 現(うつつ)も この霧多布(きりたっぷ)
ちいさな宿の やさしさに
泣けて名残りの 情けを契る

あのとき わたしは 襟裳から
やつれた女の ひとり旅
拗ねたこころを いたわるように
お酒をついで くれたのが
同じ翳(かげ)ある このひとでした

これからどうする 北の果て
あなたは漁港(みなと)へ 戻るけど
逢うも 別れも この霧多布
夜明けがせまる それまでは
霧笛まくらに 抱かれていたい
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