思い出にできない

くしゃくしゃに丸まったシャツを
拾い上げた そのとき僕は
夏がもう戻らないこと
そう初めて気がついたんだ

君がこの部屋に残した全てを
3日がかりで もう捨ててしまえたら

忘れることがこんなにも
好きになるよりもつらいから
「思い出」なんてキレイごと
言えるはずもない

あの角でこの部屋見上げ
微笑んで手を振る君
今はただ西陽を浴びて
ポプラが揺れているだけ

情けないくらいに胸が痛くなる
君が好きだった この窓からの景色

君はどんなふうに僕のこと
忘れてゆくのだろう? 教えてよ
「思い出」なんてキレイごと
言えるはずもない

壊れそうなほど細い肩
膝を抱えてすねる癖
頷くたびに揺れる髪
君のすべて……

どんなにどんなに思っても
切ないだけだと分かってる
「思い出」なんてキレイごと
言えるはずもない
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