Allegro Cantabile

88の場面の中に散らばった音掻き集めた手
言葉にならない思い並べた五線譜の上追い越した日々

交差していく三度を重ねここに響かせて――

歌う様に真っ直ぐに
歌の上を伸びていく
他には何も出来ない
時の全て預けながら

自由に解き放たれた
素直に駆け巡る指
終わり無きクレッシェンドは深く
誰かの元へ向かう

目の前に開かれた世界
繰り返す新しいプレリュード

88の夢物語 落とした休符 変わるハーモニー
静かにそっと整えた息......在るべき形取り戻すまで

掻き消される三度を重ねここに響かせて――

歌う度に信じていた
歌の側を外れていく
インテンポで躓いて
縺れていく即興の中へ

引き返す道が消える
動かされる波が近く
失った声のメロディ
誰かの元へ向かう

目の前を閉ざしていく扉
悲しみは積み上げられたエチュード

意識もなく尖らせて
掴んだ肩振り切った
いつまでも忘れないで
歌う如く心のまま

ステージの端のピアニストへ――

生きる事

こんな歌の全て
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