曽我兄弟

兄者あれ見よ 空とぶ雁も
親子そろうて 行くものを
赤沢山の 狩くらに
無念や父は 討たれたり

[十郎]弟!
[五郎]兄者人!
[十郎]よいか 目ざす敵は工藤左エ門
いざ討ち取って 恨み晴らさん
弟ぬかるな

おのれ祐経 その名も憎し
恨み晴らさで おくべきか
十八年の 天津風
夜討に勇む 蝶千鳥

母の形身の 小袖を濡らす
富士の狩場の 血のしぶき
本懐とげし 兄弟の
名乗りを聞けや 時鳥(ほととぎす)
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