キネマモザイク~薔薇の筆跡~

心はモザイク 世界は万華鏡
瞬きの間(はざま) 戀は映シ画の幻燈遊戯

七色に煌く欠片を指で
辿れば胸裏に浮かぶは惑い

玻璃窓に紗(うつ)した空は青に染みて
華と咲き誇れる春に 刹那の刻(とき)を競え

触れた指に微かに滲む 甘やかな痛み

心はさかしまに映る鏡像
言葉は消えるだけ 夢は果敢なき銀塩の虚像

しめやかにたゆとう春薔薇の名残
重ねたペイジの奥 深紅の筆跡

愛しき季節は足早に移ろいて
愁いに響くは懐かしき旋律(しらべ)

嗚呼、馨(かぐわ)しい 花咲くあの日々よ
風薫る野辺優し 遠い日の思ひ出

秘めしこの奥津城に刻んだ俤(おもかげ)

この世はモザイク 想いは映写機械(キネトスコォプ)
廻る歯車の音 時代(とき)は短き幻燈遊戯
×