名前を聞いてもわからない

釣瓶落とし秋の夕暮れ
枯れ葉を踏みしめ帰り道
黄昏どき薄寒い中
子供が公園で泣いている

心配で声かけてみても
泣きじゃくってて顔を上げない
おうちはどこかを聞いてみても
首振るばかりで埒(らち)開かない

どうしてあなたは泣いているの
あなたはどこからここに来たの
どうしてあなたはここにいるの
誰かの帰りを待っているの

ようやく少しずつ泣きやんで
私の話も聞いてくれた
お母さんはどこかと聞いたとき
私を指差し顔を上げた

どうして私を指で指すの
私は全く覚えがない
私が忘れてしまっているの
この子の名前は何というの

どうして私はここに来たの
どうして私はここにいるの
この子は何時からここにいるの
この子の名前は何というの

子供の名前忘れるなんて
自責の思いに胸が軋(きし)む
自分の子供忘れるなんて
どれほど私は罪深いの

名前を聞いてもわからないし
おうちを聞いても覚えてない
私が誰かもあやふやだし
自分の名前思い出せない

どうやらこの子は私の子で
うっかり失念してたようだ
私の名前は何でしょうか
この子の名前は何でしょうか
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