母の童歌

おじちゃん・あそこに連れてって 小さな祠のある所
貴方は教えてくれたでしょ ここから昔に戻れる・と
だったら・私は帰りたい 自分が誰だか聞きにいく

おじちゃん・訊ねていいかしら 私のふる里どこかしら
海の綺麗な・とこでした 緑の綺麗なとこでした
私の母ちゃま・いるかしら 今日も畑で草むしり
HU HU

おじちゃん・教えておくれまっせ 深江は遠いとこですか
イサム兄しゃま居るかしら 私を待っているかしら
深江に私を連れてって もう一度一緒に暮らすから

父ちゃま・自慢の菊作り 母ちゃま隣で針仕事
飴玉・一つおくれませ せめて砂糖のひと摘み
くれたら私は庭先で 一人で姉しゃま待ちまっしゅう
ああ・沖合に船が来る 私の姉しゃま連れて来る
せめて艀で行けたなら 手荷物持ってあげるのに
HU HU

母ちゃま・逝って禅宗の 笛に太鼓にかき消され
私の涙は・どこ行った 私の母ちゃまどこ行った
酒に溺れる・父ちゃまの 帰りが遅いと泣きました

母の代りと姉しゃまは 毎日せっせとご飯炊き
歌が浦から・平戸まで やがて通った女学校
あれほど焦がれた・寄宿舎の 壁に凭れて泣きました
HU HU

おじちゃん私は帰りたい 連れて帰っておくれませ
一緒に遊んだミッチャンを 誘ってみとうございます
おじちゃん貴方は進さん 誘ってテニスをいかがです?

紘子は平戸に居たかしら いやいや・それはみつ子さん
紘子にゃ辛抱させたから 私はいつも詫びている
おじちゃん平戸に連れてって 紘子に会いとうございます
ああ・船が出る 平戸まで 私を乗せておくれませ
姉しゃま・今度はいつ帰る しけたら平戸は遠い島
HU HU
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