空白の月

ひざを抱えたままの 誰もいない部屋
バスタブに浮かべられた 月が泣いてる
カーテンの手招きに夜を急いでは
曇りガラスなぞるようにピアノが響く
何もしたくない 何も見たくない 何もほしくない 今夜は
空白の海へ漕ぎ出すのならば 俺はどんな夜明けにさまよう

無口なテレビの中で息をひそめては
テールランプが揺れる 動けなくなる
「夢を見ているだけさ」 つぶやいてみても
この手のひらにこびりついた影は消えない
何もしたくない 何も見たくない 何もほしくない 今夜は
空白の海で溺れるのならば 俺はどんな夜明けに漂う

行方も知らないまま どこへ行くのかい どこへ行くのかい
波のはざまでとまどうように 答えもないまま行くのかい

何もしたくない 何も見たくない 何もほしくない 今夜は
空白の海へ漕ぎ出すのならば 俺はどんな夜明けにさまよう
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