賞状

勤続十年の賞状を
はげた頭の 会長とやらから
頭上高く 差し上げられた時
俺のつらから 涙があふれた
俺の背中で 俺が笑う
ケラケラ 俺が笑う

向学に燃えた 少年の心を
引き裂くように 裸行李 一つ
母の顔を見ずに
雪の夜道を兄と歩いた
男なら志を立てよ
十年辛抱しろ
十五もちがう 兄の言葉に
やっとの心で 涙を押えた

その日からの 俺の ふるさとは
俺の心に はいった

金に困りたくない
そんなちっぽけな気持を
向学心にかえて 持ち続けた
胸を突きさす 陽の道を
肌をも凍てる 夜寒の道を
身をかたよらせ 出前を運んだ
幾年も 年は過ぎても 俺の心に
正月の やって来たのは
幾度 幾度だったか

はげた頭の 会長とやらの
「右の者は店員の
模範として……」
大きな声が 俺の背中に
つんつんしみる
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