女の爪あと

おれのこの手の 小さな傷は
おまえがつけた 爪のあと
夜風がしみる いたみより
別れないでと 泣く声が
おれの背中に おれの背中に
つきささる

すがるおまえを 抱きしめながら
涙が胸に ふきあげる
おまえがほしい 幸福の
かけらも一つ 残せない
おれは死ぬほど おれは死ぬほど
つらかった

ひとり爪あと 唇あてゝ
男がいまは むせび泣く
おまえの細い 指さきに
こめた女の 悲しみが
おれの心に おれの心に
痛むから
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