裏町ぐらし

ほこりまみれの まねき猫
やぶれ障子に 縄のれん
化粧わすれた 女将(おかみ)の顔に
耐えてしのんだ 影がある
割れたガラスに 娘の写真
そっと見つめる 裏町ぐらし…

裸電球 ゆれている
壁につきさす すきま風
どこを歩いて きたのだろうか
泥をかぶった 靴ふたつ
灯りとどかぬ 無口な背中(せな)で
ひとり盃 しずかな酒よ…

すこしゆがんだ 神棚に
枯れて下向く 百合の花
右の目尻の ちいさな疵(きず)が
どこか似ている あのひとに
窓をつたわる しずくの音は
雨の吐息か 裏町ぐらし…
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