冬の旅人

コートの襟を立て 背中を丸めて
北の最果て 日暮れも間近
どこへ行こうか ため息をつけば
別れたお前の 泣き顔が浮かぶ
あの日から あの日から
心は 冬のまま

かもめの啼く声が 背中を突き刺す
風に追われて 歩き出そうか
ぽつり遠くに 灯火(ともしび)が見える
寂(さび)れた港を ふり向けば独り
面影に 面影に
あの日の 雪が降る

凍える波の花 ちぎれた海鳴り
おれに似合いの はなむけなのか
帰る場所さえ 自分から捨てて
お前を忘れる 終わりなき旅よ
おもいでを おもいでを
吹雪が 消してゆく
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