モノクロ

少し冷たい風 雨雲を運んで
かすかな影が色を奪った

右手の中にある
使い捨てのカメラ
何をとりたかったのかわからず

ああ止まったバスを降りる人の足音が響く

急ぎ足で過ぎる まばらな人波も
無表情すぎる今日の空も
どうでもいいような記憶が増えるより
君の笑顔を憶えたくて

雨が降りそうだと知ってて
電話をかけるんだ

少し困った声
それでも僕は嬉しくなってしまう

憶えていることはほんの一握りでも
小さな欠片さえも僕らの遠ざかる日々の証

いつも拾えずに逃がしてしまう言葉も
寄り添ったつもりで すれ違う今の僕も
いつの日にかこの不器用な日を超えた時に
何か意味を持つのだろうか

時が過ぎたとして
今日の日の写真は
いったい何を先に残すの

色のない雲間も
黒いアスファルトも
この感情を残しはしない

どうせ撮るのならば
幸せの気持ちになるような
大好きな場所と君を
思い出せるような一枚がいいな

憶えていられることはほんの一握りでも
たとえこの瞳に焼き付けられなくても
何気ないような写真を繋ぎ合わせた日々の中
僕らが共に過ごした季節を忘れないように
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