夜半の月

翳りだした夜半の月、全てを塗り潰す
黒の視界、目隠しのように私を飲み込んで
この手を牽いている貴方へと呟いた。

あぁ、身を溶かして逃げましょう
掴めぬほど遠い何処かへ。
だから雲が途切れるまでには
あの崖を越えて向こう側へ、いきましょう。

雲を裂いた夜半の月、全てを曝けだす
過去も今も、この先の道筋さえ決めるように
この手を牽いている貴方にも分かるでしょう?

あぁ、身を落として消えましょう
立ち入ることは許さないわ。
だから、足音が迫る前に
あの崖を越えた向こう側へ、いきましょう。

聞いたの、あそこにいけば幸せ掴めるって
この手を牽きながらお互いを確かめた。

あぁ、身を裂かれるくらいなら
月の傍で寄り添いたいわ。
だから、夜が明けてしまう前に
あの崖を越えて向こうへ、いきましょう。

あぁ、私たちの行く末に
朝なんて必要ないから
夜半の月が見下ろしているこの場所で
たった一つの愛だけ連れていく。

暁に染まる空、夜半の刻は最期
いつか、一つになった私たちを見つけて下さい。
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