カノン

ボクは今日 ふたのついた
ビンの中で泳ぐ
玉虫色の光を
キラリ キラリさせながら
腹を出し 尾っぽを流して
泳ぐ 赤い金魚

ふ~らり ふ~らり ふ~らり

泳ぐことは頭をぶつけることだ
見ているアナタに 痛さはわからないだろう
ボクは上へも下へも行かないところで
まるであなたの知らないところで
泳ぐ 赤い金魚

ふ~らり ふ~らり ふ~らり

七色に懐れた光の中では
冷たい水と硬いガラスの
優しさに 恥ずかしくなって
こんなに真っ赤になって泳いでいるのです

ふ~らり ふ~らり ふ~らり

やわらかい 膨らんだ腹の中には
黒ずんだ緑のフンが 所狭しと詰められて
一日に数センチの悲しさをしぼり出し
この透き通った水を
汚し 汚し 泳ぐのです

ふ~らり ふ~らり ふ~らり

ああ、もう嫌だ!
と思うことだけが
まだこうして居れる力なのです
だからボクを「アイシテル」と言うのなら
このビンを手にとって
あの硬いコンクリートの壁に
たたきつけて下さい

ふ~らり ふ~らり ふ~らり

ぼくは今日 ふたのついたビンの中で
泳ぐ 金魚
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