海の匂いのお母さん鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 田村和男 | 船村徹 | 丸山雅仁 | 海の匂いが しみこんだ 太い毛糸の チャンチャンコ 背なかをまるめて カキを打つ 母さん 母さん お元気ですか 案じております 兄貴とふたり 海が時化(しけ)れば 時化(しけ)るほど カキはおいしく なるという 母さん あなたの口癖が 土鍋を囲めば きこえてきます やさしい笑顔が 浮かんできます 遠く離れた 子供らに 海の匂いを くれた母 わたしは 手紙が下手じゃけと 母さん 母さん 黙っていても 伝わりますとも あなたのこころ |
ハマナスの眠り唄鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 内館牧子 | 三木たかし | | 早く眠ってしまえよ 悲しいことがあった日は きっと明日(あした)が 早く来る お前はハマナス 後ろから抱く俺は海 笑えるように 笑えるように 早く目を閉じて 膝を抱(かか)えてしまえよ 立ちあがれない そんな日は がんばることは ないんだよ お前はハマナス 後ろから抱く俺は海 心配せずに 心配せずに 早く目を閉じて 愚痴をこぼしてしまえよ すべてがうまく いかぬ日は 楽になって 眠れるから お前はハマナス 後ろから抱く俺は海 明日のために 明日のために 早く目を閉じて 明日のために 明日のために 早く目を閉じて |
男宿鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 新本創子 | 杉本眞人 | | わかれにゃならぬ 男はヨ 酒を枕の 役者だぜ 細い女の すすり泣き 背ながわすれちゃ くれぬだろ この俺を 怨みなよ そして奴と逃げろ 惚れて惚れて… 二人暮らせ 波止場じゃ渡し船(わたし)の 灯(ひ)がゆれる 三途(さんず)の海で 稼ぐにゃヨ どうせ女房は よけいだぜ みえで意地張る 酔いどれに あいそつかして くれたかい 哀しいぜ せつないぜ なみだ芝居ひとつ 惚れて惚れて… 奴と生きろ 波止場は出船の 満ち潮だ 小さな荷物 かくすよに 両手あわせる 女影 薄目あけてヨ 見おさめだ 夜の硝子窓(ガラス)の さびしさよ しあわせに なるんだぜ 俺にゃ酒があるさ 惚れて惚れて… おまえ抱いた 波止場はみぞれか 男宿 |
雪の華鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 里村龍一 | 杉本眞人 | | 流れ他国の 北の停車場(えき) しのぶ過去(むかし)に 雪がふる ゆらゆら肩に 舞い降りて 解(と)けて儚(はかな)く 胸を刺す ゆらゆらゆらり せつないよ あいつは春の 雪の華 胸でくすぶる 詫び言葉 言えずじまいで 春が逝く ホロホロひとり 飲む酒が やけに身に泌む 縄暖簾(なわのれん) ホロホロホロリ 逢いたいよ あいつは春の 雪の華 何処へ逃げても 面影が 雪の季節にゃ 浮かぶだろ ハラハラひとつ 手に乗せりゃ 消えて涙の 露になる ハラハラハラリ 淋しいよ あいつは春の 雪の華 |
風待ち食堂鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 新本創子 | 船村徹 | | 人の世の坂 ころげ落ち 裏目裏目と 生きてきた ふらり風待ち 港の食堂 熱い番茶を すすりながら 俺はお前を 目にとめた いい女だと 焼きついた ずっとここかと 聞いてみた ずっと一人と 目を伏せた 北の風待ち 港の食堂 海が荒れたら 淋しだろね そっとかばって やりたくて ジャンバーを脱ぎ 抱きしめた 所帯持つよな 柄じゃない 男のら犬 そんな俺 ふらり風待ち 港の食堂 ゴムをほどいた 長い髪の 熱い思い出 もらってく やけに厳しい 恋だった |
母のいない故郷鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 新本創子 | 船村徹 | | 母のいない故郷(ふるさと)は風の村 無人駅に降りりゃ 子供にかえれない淋しさ 母さんのせいだよ ただ時の流れにたたずむばかり 母のいない故郷は雪の村 暗い夜道走って くぐり戸うしろ手に閉めれば 懐かしい囲炉裏ばた ただほだ火とろとろくすぶるばかり 母のいない故郷は春の村 かごに草を摘んで 手拭いかぶってく村人 母さんに似てたよ ただ後姿を見送るばかり |
石ころの唄鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 万城たかし | 宮下健治 | 竜崎孝路 | 転がる石を 蹴飛ばした 遠い昔に 飛んでった 酒でおふくろ 泣かしてた 憎い親父が そこにいる 石ころ ころころ抱いてみる 抱いてみる 時の流れに 丸くなる まん丸石と 割れ硝子(がらす) うしろ向かずに 逃げ出した がんこ親父の げんこつは 石の固さに よく似てる 石ころ ころころ知っている 知っている 俺が泣き虫 だったこと 月夜の石に つまづいた なぜか恋しく 泣けてくる 父の背中は でっかくて 俺はやっぱり 越えられぬ 石ころ ころころ蹴ってみる 蹴ってみる 遠い親父の 音がする |
都の雨に鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 吉田旺 | 船村徹 | 蔦将包 | 故里を 想いださせて 降りしきる 雨は絹糸 帰ろうと おもいながらも いたずらに 時を見送り 待つ母に わびる明け暮れ 追いすがる 母をふりきり 若さゆえ 棄てた故里 人の世の 夢にやぶれて ふりむけば 胸にやさしく 草笛の 歌はよぎるよ まごころも うすい都に 降りつづく 雨は溜息 ひびわれた 心ひきずり うつむいて 生ける夜更けに ひとり聞く 雨のわびしさ |
裏と表のブルース鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 万城たかし | 宇崎竜童 | 丸山雅仁 | ボロと錦は 表と裏の 垣根越しかよ 浮世みち 裏があっての 人生かるた 小窓(まど)の夜空は 四角に晴れて 月は十五夜 母の…母の…母の… 笑顔に変わる 青い畳が 破れたならば 裏を返して また生かす 裏があっての 表じゃないか 夢に破れりゃ また縫い合わせ 表通りを 母と…母と…母と… 歩いてみたい 西に沈んだ 太陽だって 朝になったら また昇る 裏があっての 明日じゃないか 春になったら 桜の下で 抱いてやりたい 母の…母の…母の… か細い肩を |
詫び椿鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 朝比奈京仔 | 木村竜蔵 | 石倉重信 | 真(まこと)の恋などあるのでしょうか こぼすおまえのため息が とけてくるよな 夜の雨 男心の身変わりに 散ってくれるな 詫び椿 別れの宿の 別れぎわ 死ぬというから 叩く頬 抱いてなだめる 手のひらに のこる傷(いた)みを忘れない 忘れられよか 詫び椿 片瀬の恋なら あきらめられる ふたつの岸で 思いあう 恋は深みに向かうだけ 人のさだめか 浮き沈む 川に一輪 詫び椿 |
ジャコマン船鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 星野哲郎 | 首藤正毅 | | 女は船だよ かわいいけれど 男にゃあぶない 乗りものだ まさかの時には 船もろともに 沈む覚悟で乗ってこい 一網(ひとあみ)千両の ジャコマン船 母船がとどけた 汐ぬれ便り つららのナイフで あけてみりゃ 毛蟹を見るたび あんたのかおを おもい出すわと 書いてある あの娘もおきゃんな ジャコマン船 幸せほしけりゃ 生命をかけろ 吹雪のむこうに 明日がある やもめをとおした おふくろさんが おれにおしえた 口ぐせが きこえてきそうな ジャコマン船 |
母ちゃんお嫁にゆかないで鳥羽一郎 | 鳥羽一郎 | 星野哲郎 | 中村典正 | 南郷達也 | 逢いたかったら 瞼をとじろ 母は瞼の 裏にいる だけど気になる 故郷の空を 仰いでそっと あの子は叫ぶ 母ちゃん 母ちゃん お嫁にゆかないで 若いやさしい 母ちゃんだから ひとりぽっちは 可哀そだ いつも祖父(じ)さまは 手紙に書くが 俺はいやだと あの子はすねる 母ちゃん 母ちゃん お嫁にゆかないで つらいときには 戻ってゆける 愛の塒(ねぐら)さ 母ちゃんは 自分ひとりの 止まり木だから 写真をなでて あの子はせがむ 母ちゃん 母ちゃん お嫁にゆかないで |