この世で1番悲しい言葉はきっと『ありがとう』なんだって。

 2019年4月24日に“リリィ、さよなら。”が新曲「Clover ~naked version~」を配信リリースしました。シンプルなピアノ1本と歌のみで構成された『naked version』のこの歌。描かれているのは、8月に発売予定のニューアルバムへとつながる、悲しくて、切なくて、優しい、終わりとはじまりです。今日の歌ではそんな1曲をご紹介いたします。

傷つけ合ってもうウンザリさ
同じ道を歩くほど 歩幅がすぐ合わなくなって

立ち止まったり迷ったり 途方に暮れたりもして
何度も遠回りした足跡

探して続けていた物語
それはここだったんだね きっと
「Clover ~naked version~」


 これまでの<足跡>を振り返る冒頭。一緒に幸せになりたくて、いつかはハッピーエンドにたどり着けると信じて、なんとか<同じ道>を歩き続けてきた二人の姿が見えてきますね。もちろん、嬉しいときや楽しいときだってたくさんあったはず。だからこそ、何度<傷つけ合って>も<遠回り>しても、諦めずに足並みを揃えようとしてきたのです。

 でもそれ以上に<僕ら>には“無理”が生じておりました。「同じ道を歩かなきゃ」「歩幅を合わせなきゃ」「なんとか逆境の出口を見つけなきゃ」と、いつのまにか“幸せになりたい”という想いが“幸せにならなきゃ”という義務に変わっていたように思えます。ゆえに、互いに疲れ切って<もうウンザリさ>なんて本音も溢れているのでしょう。

 では、そんな二人が見つけた“<探して続けていた物語>=ここ”とは、何なのでしょうか。J-POP的には“逆境もあったけれど、もう大丈夫。ここから二人で歩んでいこう”というポジティブな展開が予想できそう。しかし、悲しいけれど、そうではありません。歌詞を読み進めていくと明らかになりますが、物語はここで“エンド”なのです。

君の最後の言葉はやっぱり『ありがとう』で
だから僕はこの世で1番 悲しい言葉はきっと
『ありがとう』なんだって そう思ったんだ

また新しいストーリーを探して
歩き始めていく君に唄う
「Clover ~naked version~」

 二人の<探して続けていた物語>の正解とは<同じ道>を歩き続けることではなく“別々の道”を行くことだった。お互いの幸せのために“諦める”ことだった。その正解に丸をつけるかのように、最後に『ありがとう』と告げる<君>。それは<僕>の胸に<この世で1番 悲しい言葉>として響きました。つまり<僕>は<この世で1番 悲しい>選択をし、<この世で1番 悲しい>終焉を受け入れようとしているのでしょう。

君との旅はもう少しで終わってしまって 今はただ
巻き戻されたフィルムだけ ぼんやりと眺めていた
確かめるように
「Clover ~naked version~」


 そして<この世で1番 悲しい>時間のなか、ひとり<巻き戻されたフィルム>を眺めて<確かめ>たいことは山ほどあるはず。終わってしまった旅の記憶。最後の『ありがとう』の声。もう思い出は更新されない現実。この選択が正しいこと。<君>が<また新しいストーリーを探して 歩き始めていく>姿。それらを<僕>は、まだ歩き出せずに<確かめるように>眺めているのです。

クローバー 今日までの旅の
栞の代わりにこの唄を持っていってくれ
クローバー こぼれそうなくらい君にもらったもの
ぜんぶ

クローバー 大切にするよ 君と過ごした名もない日々
クローバー 僕らだけの秘密さ 胸に抱いておくよ
いつまでも
「Clover ~naked version~」

 こうして幕を閉じてゆく歌。今、きっと<僕>は2つの感情の狭間で揺れているのだと思います。というのも【クローバー】には2つの花言葉があるんです。1つは【幸運】。もう1つは【私を思って】です。それは、他の誰かと<君>の幸運を祈りたい、でもやっぱり自分を思い出してほしい、そんな<僕>の相反する本心にリンクするものでしょう。

 この唄で<僕>は<君>に『さようなら』とは告げておりません。そんな言葉では片づけられないから。片づけたくないから。だから<この唄>に、【クローバー】に、すべての想いを込めて<君>に捧げるのです。大切なひととお別れをしたばかりだという方。是非、リリィ、さよなら。「Clover ~naked version~」にその想いを重ねながら、聴いてみてください。この唄を聴いたあなたにもどうか【幸運】が訪れますように。

◆紹介曲「Clover ~naked version~
2019年4月24日配信
作詞:ヒロキ
作曲:ヒロキ