やさしい人にしかやさしくできない、なんてうそつき。

 2018年10月10日に“坂口有望”が新曲「3 3 4 1」を配信リリースしました。NHK『みんなのうた』へ書き下ろされ、10月~11月放送中です。子どもから大人まで楽しんでもらえるような、明るく楽しく、でもちょっぴり青春時代特有の儚さを味わえる楽曲にチャレンジしたというこの歌。タイトルには、どんな意味が込められていると思いますか?

付箋に書いてくれたメッセージ読んだよ
君の丸文字で前を向けたよ
ありがとうとかそんなんじゃないけど
会いたくなかった
さよならが言えなくなるから

手帳に書かれていた落書きみつけたよ
少しだけあの日に帰れたよ
100%とか絶対じゃないけど
さみしくなかった
思い出はパソコンにうつした

離れ離れの日々だけど毎日大事にしたいね
「3 3 4 1」/坂口有望

 まず、歌詞からパッと思い浮かぶのは“卒業”でしょうか。幼稚園、小学校、中学校、高校、大学…。でも人が<離れ離れ>になるのは、学校を卒業するときだけではありませんよね。会社を辞めたり、転勤になったり、親から自立したり、子離れしたり。そう考えるとこの歌は、どんな世代にも当てはまる、まさに『みんなのうた』であると言えます。
 
 そして、そんな<さよなら>を目前にしても素直になれないのが、この歌の<わたし>です。<ありがとうとかそんなんじゃない>と言いながら、本当は<さよならが言えなくなる>くらいに感謝でいっぱいで。<さみしくなかった>と言いながら、きっと<手帳に書かれていた落書き>も携帯で撮って<思い出はパソコンにうつした>ことでしょう。

 だけど、たとえこれから<離れ離れの日々>でどんなことがあっても<付箋に書いてくれたメッセージ>に励まされた気持ちや<手帳に書かれていた落書き>で思い出せる景色が“人生の自信”になって毎日を支えてくれるはず。また、いつかは“今”が、愛しい過去に変わると知っているからこそ<毎日大事にしたい>と意識しながら、進んでゆけるのです。

やさしい人にしかやさしくできない
なんてうそつき
だってわたしは違うから
素直になれないって素直に言えない
なんでわたし涙が出たんだろうか
「3 3 4 1」/坂口有望

自分のことにしか心を削げない
なんてうそつき
だって今更になったけど
頑張る人にこそ頑張れって言えない
そんな癖が君のやさしさとわかったから
「3 3 4 1」/坂口有望

 こちらはサビ部分。どのフレーズでも<君>の<やさしさ>を懸命に伝えております。やさしくない人にだってやさしい。自分のことだけじゃなく他者をすごく思いやって生きている。それが<君>なんだと。しかし、それほどに<君>と丁寧に向き合い、いろんな<やさしさ>に気づくことができる心を持っている<わたし>だって、十分に<やさしい人>なのではないでしょうか。
 
 やさしい人だから<頑張る人にこそ頑張れって言えない>ような繊細な<やさしさ>もわかるのです。<わたし>は不器用で、素直じゃなくて、口下手。ただし<涙>だけは正直に心の様子を教えます。<なんでわたし涙が出たんだろうか>。その答えはもちろん「3 3 4 1」=【さ み し い】からです。そして、それを口にしないのは、ただの強がりではなくて、やさしい<君>を困らせないためであるような気がしませんか…?

やさしい人にしかやさしくできないなんて
うそばっか だってわたしは違うから
お別れのあとの届かない「ありがとう」
なんでわたし涙が出たんだろうか
「3 3 4 1」/坂口有望

 自分は<やさしい人>なんかじゃない。そう歌う<わたし>ですが、実は歌の最初から最後まで<やさしさ>が詰まっているのが、坂口有望の「3 3 4 1」なのだと思います。素直じゃないタイトル。素直じゃない歌詞。それでもあたたかな想いが真っ直ぐに伝わってくるこの歌を是非、大切な人を思い浮かべながら聴いてみてください…!

◆紹介曲「3 3 4 1」
2018年10月10日配信リリース
作詞:坂口有望
作曲:坂口有望