こんなにだらしない自分の姿、見せられる人はたった一人だけ。

もし君を 許せたら
また誰かを 愛せるかな?
閉ざしたはずの心なのに
どうして まだ 夢見るんだろう?
生きてくんだろう?
「もし君を許せたら」/家入レオ

 2018年8月1日に“家入レオ”がニューシングル「もし君を許せたら」をリリースしました。タイトル曲は、月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』の主題歌。誰かに裏切られても、憎み憎まれても、それでもまだ未来に夢見て、生きてゆく心の在り方を描いた1曲となっております。すでに<閉ざしたはずの心なのに>かすかな希望を捨てられないのは、きっと愛し愛されていた頃の記憶があるからです。
 
 <僕>と<君>は元恋人同士だったと考えると、かつての二人にはこんな哀しい今なんて想像できないほど幸せな時間だってあったはず。たとえば、ニューシングルのカップリングとして収録されている新曲「めがね」の二人のように…。そこで今日のうたコラムでは、あたたかなラブソング「めがね」の歌詞もご紹介いたします!尚、この歌は家入レオ本人が作詞作曲。

今日は久しぶりのお休み
でたらめ英語でビートルズを歌う
君の声が聞こえる そろそろ起きなきゃな

寝ぐせに パジャマに 分厚い眼鏡
こんなにだらしない自分の姿
見せられる人は たった一人だけ

テレビはいつもの天気予報
飲みかけのコーヒー 打ちかけたままにしてるメール
こんな毎日
「めがね」/家入レオ

 もう冒頭から、穏やかで和やかな<久しぶりのお休み>の光景が浮かんできますよね。いつも忙しい主人公が、やっと同じ部屋で<君>と過ごせる大切な時間なのでしょう。それに普段は、髪型も服装もきちっとして、コンタクトをしているけれど<君>だけは<だらしない自分の姿 見せられる>唯一の存在。つまりここは、ただありのままの自分でいられるだけではなく、ありのままの自分を受け入れてくれる人がいる場所なんです。

 また、歌詞には暮らしの基礎である【衣食住】をイメージさせるワードも多く登場し、すでに主人公は<君>と共に“生活”というものを共有しつつあるのだということが伝わってきます。ただし、ありのままの自分=<だらしない自分>とは、もちろんポジティブな意味合いばかりではありません。<飲みかけのコーヒー 打ちかけたままにしてるメール>…。この主人公には何事も“中途半端なまま”にするようなだらしないクセがありそう。

君が好き 当たり前に すぐそばで笑ってる人
探していた 幸せを 守りたいと思ってるけど

先週急に君の親友から
これから会える?と連絡が来た
ちょっと気になるけど めんどくさいな

仕事も君のことも最近サボりがちだしな
溜まったワイシャツ クリーニングに出さなきゃな
こんな毎日
「めがね」/家入レオ

 それゆえに<探していた 幸せを 守りたいと思ってるけど>と“けど”が続いてしまうのです。そして、これは想像ですが<先週急に君の親友から これから会える?と連絡が来た>その話の内容とは、恋人との関係をいつまでも“中途半端なまま”にしている主人公への叱咤、なのではないでしょうか。もしかしたら<君>は、いつまでダラダラ同棲が続くのか、結婚はいつなのかと、親友に相談していたのかもしれません。
 
 さらに主人公自身も、その話をされることをうすうす気付いており<めんどくさいな>などと思っている気がしませんか…? でも、仕事をサボり続ければクビになるように、ワイシャツを溜めすぎれば着るものがなくなるように、大切な<君のこと>だって考えることをサボり続ければ、関係は終わってしまう。主人公はこれから<めんどくさいな>がクセになっている<だらしない自分>を越えて<こんな毎日>をクリーニングする“意志”が必要なのだと思います。

私のこと 今も好き? 不意に君が尋ねて
頷いて やわらかな その胸に 手を伸ばす

君が好き 当たり前に すぐそばで笑ってる人
探していた 幸せは 確かに ここにある
「めがね」/家入レオ

 さて、こうして幕を閉じてゆく歌。主人公は、彼女からの<私のこと 今も好き?>という不安交じりの質問に対して<頷いて やわらかな その胸に 手を伸ばす>という反応をし、まだどこか“中途半端なまま”現状をはぐらかしているように感じなくもありません。だけど、たしかなのは<君が好き>という気持ちがちゃんとここにあることです。

 だらしなくて、めんどくさいことは嫌いでも、その分、愛情の在り方はシンプルで濁りがない。だからサビで伝えるメッセージもストレート。それが主人公のありのままの魅力です。その自分の“ありのまま”と<君>の“ありのまま”をお互いに気持ち良い形で継続してゆくことが幸せであり、共に生活してゆく、ということなのではないでしょうか。

 いつか「めがね」の主人公が「もし君を許せたら」の<僕>になってしまいませんように。逆に、いつか「もし君も許せたら」の<僕>が「めがね」の主人公のような日々をまた送ることができますように。そんな対比もできるのが、家入レオの今作です。是非、いろんな想像を膨らませながら歌詞をじっくりと堪能してみてください…!