大人になるとその石は、先に進む邪魔をした。

 2018年3月28日に“ココロオークション”がメジャー1stフルアルバム『Musical』をリリース。今日のうたコラムでは、今作に収録されている新曲「少年と夢」をご紹介いたします。みなさんにも、少年や少女の時代に見つけた夢ってありませんか? それを今も持ち運んでいますか? それとも…。

旅の途中拾った ポケットの中の宝石
あぁ まだ今は原石 大事に抱えて運んでく

そんな石ころに 価値はあるのかと
馬鹿にされても 捨てないでいる

少年はそれを夢と 名付けて運ぶことにした
輝く時が来ると信じながら 磨き続けた
「少年と夢」/ココロオークション

 この歌の主人公もまた、少年時代にひとつの大切な夢と出逢ったようです。当時は誰が見ても<そんな石ころに 価値はあるのか>と言うような、無謀で現実味のない夢。しかし少年だけは、その石ころがまだ<原石>である段階から、本当は<宝石>なのだと知っているのです。

 というより<輝く時が来ると>信じているのです。それは“根拠のない自信”でしょう。ただ、若い頃はそんな根拠のない自信こそが<夢と名付け>た原石を、何の疑いもなく磨き続けてゆくエネルギーになるもの。他人に<馬鹿にされ>ることさえ、自分だけが<原石>の真の価値を知っている自信を支えるのだと思います。

落としてかけてしまった 形が変わった宝石
傷がついた原石 どれくらいの価値を失くしたろう

こんな石ころが 何になるのかと
自問自答を 抱え続けた
「少年と夢」/ココロオークション

 だけど、若い頃にエネルギーの源となっていたはずの“根拠のない自信”は、徐々に不安の源へと変わってゆく模様。自分を支えてきた自信に根拠がないことにハッキリ気づいてしまうのです。しかも宝石は、経験の中で<落としてかけて>傷ついて形が変わってしまった…。これは同時に、少年の様々な失敗やプライドの損傷を表しているようですね。

大人になるとその石は 先に進む邪魔をした
少年はその夢を 忘れることにした

荷物減らして 身軽になった
だけど 笑うことは 少なくなった
「少年と夢」/ココロオークション

 そうして大人になった少年は、やがて<その夢を 忘れることに>しました。現実問題、就職や結婚などの大切なタイミングを目の前にしたとき、残念ながら<その石は 先に進む邪魔を>することがあるんですよね。大きすぎるわりに、価値も信じられない夢は、ただの重荷になるのです。

 とはいえ、夢とは簡単に忘れさせてもくれない、やっかいなもの。たとえるなら、最愛の恋人と別れたような心境ではないでしょうか。ひとときは<荷物減らして>せいせいするでしょう。でも、離れてみてより一層、実感してしまうその存在の大きさ、大切さ、愛おしさ。少年が<笑うことは 少なくなった>のは、夢あっての心だったから。夢あっての自分だったからです…。

ある日 引き出しの奥に宝石
見つけた時 心震えた

大人なった少年は もう一度石を取り出した
憧れと誇りが その心強くした

どこにも売っていないような 自分だけの宝石を
磨き続けるのさ この旅が終わるまで 終えるまで

もうずっと磨いてきた
大切なものを眺める瞳は宝石
「少年と夢」/ココロオークション

 このように幕を閉じてゆく歌。そう、大人になった少年は<もう一度石を取り出した>のです。そして、その時に実感したのは、自分を自分たらしめる<憧れと誇り>なんですよね。また、いつかこうなることを心のどこかで予感していたからこそあの時、夢を捨ててしまわずに<引き出しの奥に>しまったのではないでしょうか…。

 きっと彼は生涯、この大切な石をもう手放すことはないでしょう。たとえ石が<原石>のままであろうとなかろうと<大切なものを眺める瞳は宝石>だからです。原石を磨き続ける今この人生こそが、輝いている<宝石>そのものなのです。

 今、大切な<原石>がポケットの中に入っているというあなた。価値を見失いそうになった時には、諦めるその前に、ココロオークションの「少年と夢」を聴いてみてください。すべての夢を追う方々にこの歌が届きますように…!