私の右手、スーパーでスペシャルになったもの

初めて手をつないでから
その後すぐに 私の右手
スーパーでスペシャルになったもの

やっぱりそうだ あなただったんだ
うれしい!たのしい!大好き!
何でもできる強いパワーが どんどん湧いてくるよ
「うれしい!たのしい!大好き!」/DREAMS COME TRUE

 2月27日は【冬の恋人の日】と呼ばれているんだそうです。この日が2月14日のバレンタインデーと3月14日のホワイトデーの中間にあることに由来しており、恋人同士の絆を深める日とされています。今、大切な人がいるという方は是非、ドリカムの名曲「うれしい!たのしい!大好き!」のように<手をつないで>ますます<何でもできる強いパワー>をアップさせてください…!

 ところでこの歌。主人公の<右手>が<スーパーでスペシャルになった>ということは、<私>は<あなた>の左側にいて、<あなた>の左手を握っていたということですよね。今日のうたコラムで注目したいのはそんな“右側と左側”についてなんです。さらにドリカムには次のようなフレーズが綴られている楽曲もございます。今度は「うれしい!たのしい!大好き!」とは打って変わり、切ない失恋ソングです。

いつもつないでた右の手が 風をうけて冷たい
「STILL」/DREAMS COME TRUE

 こちらもやはり<右の手>です。想像すると残酷ですが、もしも「うれしい!たのしい!大好き!」の主人公がいつか<あなた>とお別れしてしまったとしたら、相手の不在をこのように<風をうけて冷たい>自分の<右の手>から実感するのではないでしょうか。何故なら<右の手>を<いつもつないでた>から。いつも左側だった自分の定位置を失ったから。いつも右側には<あなた>はあなたがいてくれたから…。

 実は、恋愛サイトの調査によると、世の中のカップルの大体7割が【男性が右側、女性が左側】であるのが定位置なんだとか!つまり男性の左手と女性の右手が繋がれるということですね。「うれしい!たのしい!大好き!」や「STILL」も、主人公が“女性”だと考えるとまさに然り。みなさんは気になる人や恋人と一緒にいる時、いかがですか…? そして、歌詞を検索してみると、ほとんどのラブソングがその【男性が右側、女性が左側】の法則に当てはまるんです…!

【女性アーティスト】
冷えきったあたしの右手で
信号待ちで追いついた 
君の左の頬 つねってみたり
「赤いマフラー」/井上苑子

あなたのいない右側に
少しは慣れたつもりでいたのに
どうしてこんなに涙が出るの
「M」/PRINCESS PRINCESS

1人じゃこの右手がほら
君だけを探しているの
「ひとりぼっちの涙」/erica

握れなかったその左手も
初めて目を合わしてしゃべった交差点も
私の特別である事はこれからも変わらないから
「終わり」/SHISHAMO

あなたの左側が 私の定位置
これからもずっと
「Dear My Boo」/當山みれい

【男性アーティスト】
傘の左端に寄る癖が治らない君は
左肩の鞄がいつもびしょ濡れで
「Twilight」/コブクロ

モノクロの冬snowflakes 今も左手が
君の右手を 探してる
「涙雪」/Sonar Pocket

僕の知らない誰かと同じ右手を繋ぐとか
僕の知らない誰かと同じキスをするとか
「デイドリーム」/reGretGirl

いつものように左側にいる君はまるで他人みたいな空気
ずっとまとったままで 無言の会話が続く
「駅までの帰り道」/オトループ

 女性アーティストによる楽曲、女性が主人公だと考えられる楽曲では、自分の<右手>もしくは相手の<左手>が描かれております。また、いつも自分の<右側>にいた<あなた>の描写も。一方、男性アーティストによる楽曲、男性が主人公だと考えられる楽曲では自分の<左手>もしくは相手の<右手>が描かれております。そして自分の<左側>に<君>がいるんです。いずれも【男性が右側、女性が左側】説に当てはまっていますね。
 
 この説には様々な理由があるらしいです。右側は主導権を握る人、左側はリードされる人という心理構造。男性が利き手(右手)は自由にしておき、左手で大事な人を守ろうとする本能。人間は左側に心臓があるため、自分の左側には安心・信頼できる人しか立たせたくないという潜在意識があり、それが男性の方が女性より敏感であること、などなど。逆に女性は、男性の左側にいることで、自然と守ってもらえているような、リードしてもらえているような気持ちになるわけですね。では【男性が左側、女性が右側】の場合はどうなのでしょうか。

あたりまえになった僕の隣 右側にならんで
まるで二度と会えない別れみたいに 言うのは君のほう
「パレット」/嵐

僕の右手と君の左手
つなげば心はもうほてっちゃって
この冬は薄着ですみそうさなんて…でも本当は…
「会いたい」と言えなかった
僕はまるでクリスマスチキン
「クリスマスチキン feat. ダイスケ」/近藤晃央

 【男性が右側、女性が左側】のラブソングに比べて、検索ヒット数はグッと下がりますが、嵐「パレット」や近藤晃央「クリスマスチキン feat. ダイスケ」がその例。【男性が左側、女性が右側】の場合、女性を守る自信がなかったり、その女性を自分より上の存在であると思っていたり、女性の方が主導権を持っていたり、ということが理由であるようです。たしかに2曲の歌詞を読むと、どこか<君のほう>が行動を先にしていたり、<僕>が“チキン”だったりと、理由に納得できるような気がしますね。

助手席で 頬杖ついたまま 一度もこっちを見ない
車線一番右に出て 踏み込んだ

選んだのは あなたなのに その横顔は後悔してる

さらってく あなたを できるだけ 彼女から遠くへ
「i think you do」/DREAMS COME TRUE

ごめんね 荒い運転でヒヤヒヤさせた
ごめんね 行き先も決めずに付きあわせた
ごめんね あなたのやさしさにつけ込んで
混乱させて 振り回してやりたかった
「ONE LAST DANCE, STILL IN A TRANCE」/DREAMS COME TRUE

 ここで再びドリカム楽曲をご紹介いたします。この2曲のように“ドライブ”で女性が運転をして、男性が助手席に乗っている場合も、必然的に【男性が左側、女性が右側】になりますね。そして、歌詞を読むと、彼を<さらってく>と言ったり、わざと<混乱させて 振り回してやりたかった>と言ったり、いずれも女性側の方が意志が強く、主導権を握っているように感じられます…!
 
 もちろんそんな説はまったく当てはまらないというカップルもいらっしゃるでしょうし、恋愛が異性同士であるとも限りません。しかし、こうして“右側と左側”を意識して歌詞を読んでみると、登場人物の性格や物語の背景がより深く想像できて、おもしろいのではないでしょうか。ちなみに、ラブソングで主人公が右側や左側を意識するのは、失恋後であることがほとんど。大切なことは失ってから気づくとはよく言いますが、当たり前だった自分の定位置、居場所もまた、相手がいなくなって初めて気づくものなのかもしれませんね…。