久しぶりに会った友人に「負のオーラが出てるよ」なんて言われて…。

さっきまでの雨は止んで
子供らがはしゃぎながらかけて行く
雲の隙間から零れた陽射しが眩しくて
僕は俯いていた
「ガソリンの虹」/Goodbye holiday

 2018年1月24日に4人組バンド“Goodbye holiday”が自身2枚目となるミニアルバム『ドッペルゲンガー』をリリース!今日のうたコラムでは、今作に収録されている新曲「ガソリンの虹」をご紹介いたします。降り止んだ雨、はしゃぎながらかけて行く子どもたち、雲間から零れる陽射し…。一見、希望的に感じられそうな風景ですが、どうしてその中で一人<僕は俯いていた>のでしょうか。

 それは多分、頑張ること、笑うこと、希望を持つこと、生きること、あらゆることに疲れきってしまっているから。よく「止まない雨はない」「明けない夜はない」などの前向きな言葉を聞きますが、もう<僕>にとっては、雨が止もうが夜が明けようが同じことです。その光の中を<かけて行く>体力や心力がないのです。むしろその光が<眩しくて>より一層、疲労感が増してゆく…。みなさんもそんな状況に陥るときって、ありませんか?

歳重ねるほど
顔にも心にも皺が増えたみたいだ
人の目ばかり気になって
何もかもが面倒になっていた

週末の飲み会も
あの子と交わした約束も
「ガソリンの虹」/Goodbye holiday

 そして、その疲労が積もりに積もって<何もかもが面倒>という感情を作り出してしまっているのですね。ちなみに“顔の皺”とは、加齢による肌の弾力低下や乾燥が大きな原因できるもの。表情の変化による肌の跡も、若いときはすぐに元に戻るけれど<歳重ねるほど>消えずに残りやすくなるなるんだそう。おそらく“心の皺”にも同じことが言えるのでしょう。今の<僕>は心の弾力が低下していて、しかもカラカラ。だから感情の変化による跡がどんどん皺になって残ってゆくのです。

偶然 久しぶりに会った友人に
「負のオーラが出てるよ」なんて言われて
「最近ちょっと忙しくて」なんて誤魔化して
こそこそとその場を後にした

僕は自分で思っていたより
弱い人間だったんだって
なんか惨めでさ
情け無いよな
もう上手く笑えなくて
「ガソリンの虹」/Goodbye holiday

 だけど“皺”は同時に、それほどたくさん表情や感情を動かしてきたことの証でもあるのではないでしょうか。人は自分の<皺が増えた>ことに気づくと、姿や心が老いたことを恥ずかしく思い<人の目ばかり気になって>しまったり、これ以上“皺”が増えるのがイヤで<上手く笑えなく>なってしまったり、それが「負のオーラ」となって表れてしまったりするのかもしれません。この歌の<僕>もまた然り。ただし「ガソリンの虹」はそんな弱さや惨めさ、情け無さを描いて終わってゆくものではありません。

晴れた空にかかる虹のように
美しく生きて行けやしなくて
水たまりで漂う
虹色のガソリンのようさ
たとえ まがい物と言われても
ありのままでいたいよ

僕は僕と生きて行く
「ガソリンの虹」/Goodbye holiday

 自分は<思っていたより 弱い人間だった>し、雨上がりの街も、はしゃぐ子どもたちも、雲の隙間から零れた陽射しも、<晴れた空にかかる虹>も眩しすぎる。もう<美しく>生きて行くことは出来ない。疲れる…。でも、それでも、せめて<水たまりで漂う 虹色のガソリンのよう>な“虹”で在ることはできるのではないだろうか。本物の光に後ろめたい想いなんて抱かずに<ありのままで>行けばいいじゃないか。そのような“僕なりの希望”が<僕は僕と生きて行く>というワンフレーズに込められているんです。

さっきまでの雨は止んで
子供らがはしゃぎながらかけて行く
雲の隙間から零れた陽射しに手をかざして
まだ歩けそうだ
「ガソリンの虹」/Goodbye holiday

 こうして幕を閉じてゆく歌。冒頭と明らかに違うのは、眩しい風景から逃げるようにただ俯くのではなく、陽射しに<手をかざして>いるところ。それは、逃げるためではなく“僕なりの希望”を守るために大切なことなのです。光に無理するのをやめた。だからこそ<僕>は最後の最後で<まだ歩けそうだ>という体力・心力を取り戻したのです。きっとやがては<ありのまま>の自分の皺を恥じず、誇りに思って、胸を張って生きてゆくことができるような気がしますね…!今、心身ともに疲れているあなたに、この歌が届きますように。

◆ミニアルバム『ドッペルゲンガー』
2018年1月24日発売
初回限定巻き帯仕様 AVCD-93798B ¥2,700(税込)
通常盤 AVCD-93799 ¥2,000(税込)

<収録曲>
1 No discount
2 共犯
3 きらり
4 鎮痛剤
5 ガソリンの虹
6 ゴンドラの夢
7 Writing Life