好きな人には、好きな人がいる。だけどその相手は自分ではない…。

見ててツラいものが目の前にあるなら
見なくて済むように
どっか行けばいいだけ
(ドラマ『ごめん、愛してる』より)


 冒頭でご紹介したのは、TBS系日曜劇場『ごめん、愛してる』のヒロイン(吉岡里帆)が口にしていたセリフ。彼女は、24年間ずっとそばにいる幼なじみに恋をしております。しかし、彼が惚れているのは別の女性で、ヒロインのことは大切な女友達としか思っていません。それでも「一緒にいられるだけでいい」と思って生きてきた彼女ですが、他の女性と幸せになってゆく彼の姿を見るのに耐え切れず、ついに離れることを決意するのです。

 好きな人には、好きな人がいる。だけどその相手は自分ではない…。そんな経験がある方、多いのではないでしょうか。これは、永遠のテーマである【男女の友情は存在するか問題】に通じますが、二人の友情が深ければ深いほど、恋をしてしまった側はツライ思いをしますよね。時には、好きな人の恋バナを聞いたり、応援したりしなければいけないことも…。その場合、私たちにはどのような選択があるのでしょうか。今日のうたコラムでは、back number、aiko、DREAMS COME TRUE、3組のラブソング王者たちの楽曲から見えてくる選択肢に注目してみました。

どんなに誰かを想っていたって 報われるとは限らない
つぶやくあなたと見つめる私は
別の場所にいるみたいだね
「stay with me」/back number

きっと知らない事ばかりだとあなたの指輪に戸惑った
このままだって充分じゃない 言い聞かせる手に爪の跡
「気付かれないように」/aiko

ほんとは大好きなんだから ほんとに大好きなんだから
だからやっぱり 友達ぶるだろう
「ていうか」/DREAMS COME TRUE


 まずは【現状維持】パターン。「stay with me」の主人公は、彼が好きな人と<幸せならもう何もいらない>という気持ちと、でも<わたしに気付いてほしい>という想いの狭間で揺れております。「気付かれないように」の主人公は、忘れられない元カレがいるけれど、彼はすでに<今の彼女>と幸せそうだから自分の想いを<気付かれないように>している模様。「ていうか」の主人公は、彼女と別れたばかりの男友達を励ましながら<今ならもしかして>とも思うのですが、最終的には<きっとこれからも死ぬ気で>友達ぶるであろう自分にため息をつくのです。
 
 3曲とも少しずつシチュエーションや心情は異なっているものの、いずれも“大好きだから、幸せになってほしい”という気持ちと“大好きだけど、この関係を崩したくない”という気持ちの両方が伝わってきますね。だから<このままだって充分じゃない>と自分に言い聞かせて<友達ぶる>ことで“そばにいる”という選択をするのです。しかし、いつかは、ドラマ『ごめん、愛してる』のヒロインのように、そんな状況に耐えられなくなる日が来るのかもしれません…。その場合、選ぶ道は二つ。

ちゃんと最後は
隠した想いが見つからないように
横から背中押すから
誰よりも幸せにしてあげて
「幸せ」/back number

夢中になる前に 解って良かった
もう一度だけ手が触れた後だったら
きっとダメだっただろう 怖くなってただろう
止まらぬ想いに 止まらぬ想いに
「二人」/aiko

SAYONARA もう あなたとは会わない
SAYONARA 2度と会えない
「SAYONARA」/DREAMS COME TRUE

 ひとつは【身を引く】パターン。「幸せ」には<最後>という言葉があるので、おそらく、彼が大切な人と結ばれて幸せになるまでが、二人一緒にいられる時間のリミットなのだと思います。「二人」の主人公は、彼がいつも見つめていた“あの子”の存在に気づきます。<夢中になる前に解って良かった>というフレーズには“だからここで止めておこう”という諦めが含まれているのでしょう。「SAYONARA」では、仲良し男女3人組の中で三角関係が生じるのですが、勇気ある女友達が先に彼に告白したため、主人公は<SAYONARA>と身を引くのです。どの主人公の心情を考えてもツラい…。

僕の選んだ君は ちゃんと一途に
あいつを想ってるんだ 仕方ない
でも君と行きたいから
「手の鳴る方へ」/back number

あの子の前を上手に通る癖覚えたのは
もうずいぶん前の事長いなぁ
あなたの視線追うと必ずいるあの子の前を
通り過ぎてる事であたしに気付いて欲しくて
「アスパラ」/aiko

さらってく あなたを できるだけ 彼女から遠くへ
今はまだ言えない そばにいて 好きになればいい 私を
「i think you do」/DREAMS COME TRUE

 そしてもう一つは【振り向かせる】パターンです。好きな人には、好きな人がいる。だけどその相手は自分ではない…。だけどだけどそれ以上に自分の好きな気持ちは強いから諦めない!という恋のエネルギーが歌詞にみなぎっております。つまり、冒頭でご紹介したセリフとは違い「見ててツラいものが目の前にあるなら、見なくて済むように、そのツラいものに勝てばいいだけ」ということ。もしも自分が同じ状況に陥ったとき、そんな強さを持ちたいですねぇ!
 
 【現状維持】パターン、【身を引く】パターン、【振り向かせる】パターン、なんだかこの3つの選択肢はまるで、戦国武将3人の性格を表したあの有名な俳句のようでもあります。「鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす」(徳川家康)、「鳴かぬなら殺してしまえほととぎす」(織田信長)、「鳴かぬなら鳴かしてみせようほととぎす」(豊臣秀吉)。この“ほととぎす”を“恋”に言い換えてみてください。みなさんは、どのパターンに当てはまりますか…?