努力は大抵報われない、願いはそんなに叶わない、それでも…。

みんな嘘つきでしょ?
この世で一番の内緒話って
正義はたいてい負けるってことでしょ?
夢はたいてい叶わない。
努力はたいてい報われないし
愛はたいてい消えるってことでしょ?
(ドラマ『カルテット』第5話より)


 先日放送された、ドラマ『カルテット』の終盤で、ある女の子が言い放った言葉がザクリと刺さりました。耳ざわりの良いキレイゴトばかり口にしている人は、現実から目を背けているだけだと彼女は言うのです。そんな悲しいこと言わないで、と思うと同時に、たしかにそのとおりだ…と感じる部分もありますよね…。実はみんな、その“内緒話”を知っているからこそ、他人や自分自身に希望的な“嘘”を言い聞かせて生きているのかもしれません。

 ただ結局、大人になるにつれ厳しい“現実”を思い知ることがほとんど。そして、仕事でも恋愛でも人生のすべてにおいて“嘘”を強く信じて、夢みてしまった人ほど深く傷つくのです。だったら、子どものころから「夢はみるもんじゃない」と教わっていたほうがよかったのでしょうか。もしもいつか自分に子どもができたら、そのように教えるほうがよいのでしょうか…。そんなことを悶々と考え込んでいるとき、ふとラジオからこの曲が流れてきました。

もしも僕に子供ができたら
どんなことを伝えるだろう
期待してるよ 頑張れよ
そんなこと まず言わないだろう

一日三食飯食って
よく笑いよく泣き遊べ
そして他人を褒められる人になれ

努力は大抵報われない
願いはそんなに叶わない
それでもどうか腐らずに
でかい夢見て歩いて行くんだよ
「もしも僕に」/関取花

 シンガーソングライター“関取花”が2月15日にリリースしたアルバム『君によく似た人がいる』の収録曲です。歌詞の構成はどこか“さだまさし”の「関白宣言」に似ております。あの曲が妻に伝えたいことを宣言しているように、「もしも僕に」では、未来の自分の子どもに伝えたいことを宣言しているのです。<努力は大抵報われない 願いはそんなに叶わない それでもどうか腐らずに でかい夢見て歩いて行くんだよ>…、これは先ほどの『カルテット』のセリフに対するアンサーのようにも感じませんか?

 さらに「もしも僕に」の歌詞中には<初恋なんてまぼろしで 思いは大体届かない それでもどうか忘れずに 胸の端っこで大事にするんだよ>というフレーズも登場します。ではどうして、報われないこと、叶わないこと、届かないことがもうなんとなくわかっているのに、それでも“大切にしろ”と彼女は歌うのでしょうか。どうしてそれを我が子に伝えたいのでしょうか。歌は次のように幕を閉じてゆきます。

それもこれも 最後には
笑い話に変えられるように
人生なんてそうさネタ探し
楽しんだもん勝ち そういうものだよ

もしも僕に子供ができたら
そういうことを伝えたい
でもまだきっとずっと先の話
だからそれまで自分に言い聞かす
とりあえず自分に言い聞かす
「もしも僕に」/関取花


 そうです、夢みて生きるのは<楽しんだもん勝ち>だからです。どうせ正義は負ける、愛は消えるなどと、すべてを諦めて生きるよりも、逆にいっそすべてに希望を持って毎日を過ごしたほうが、生きてゆくのが楽しいような気がしますよね。そしてたとえ傷ついたってそれさえ人生の“ネタ”として宝物にしてしまえばいいのです。そう考えると、冒頭のセリフで悶々としていた気持ちが少し軽くなってきます。また、未来の子どもへのメッセージと見せかけておいて、本当は今の<自分に言い聞かす>というラストもグッときます。この曲は「私はこうやって生きていきたい」という宣言だったんですね…!
 
 ちなみに、関取花は昨年9月に『行列のできる法律相談所』に出演。先日2月14日には『今夜くらべてみました』に登場し、“ひがみソングの女王”や“ひがみ系アーティスト”とも称され話題になっております。「もしも僕に」の他にも、アルバムに収録されている「べつに」や「また今日もダメでした」など、歌詞を読んでいただきたい楽曲揃いですので、是非チェックしてみてください!

◆紹介曲「もしも僕に
作詞:関取花
作曲:関取花

◆ニューアルバム『君によく似た人がいる』
2017年2月15日発売
DSKI-1001 ¥2130 +税

<収録曲>
1 この海を越えて行け
2 君の住む街
3 また今日もダメでした
4 ベントリー・ワルツ
5 もしも僕に
6 僕らの口癖
7 べつに
8 黄金の海で逢えたなら
9 カッコー
10 平凡な毎日
11 それでもいいならくれてやる