好きとか嫌いとか欲しいとか、口走ったら如何なるでしょう…。

真っ黒な中に一つ消えては浮かぶ吐息よ
冷たい闇夜は僕の願い飲み込み匿います
真っ白な息がいまもっとも無垢な本音と
悴んだ声でなにを歌う?嘘でも本当でも
好きとか嫌いとか欲しいとか
気持いいだけの台詞でしょう
ああ白黒付けるには相応しい
‥滅びの呪文だけれど‥
「おとなの掟」/Doughnuts Hole

 火曜ドラマ『カルテット』の主題歌、“Doughnuts Hole(松たか子・満島ひかり・高橋一生・松田龍平による劇中ユニット)”が歌う「おとなの掟」の配信が2月7日からスタート!iTunes総合チャートで第1位を獲得し、圧倒的な勢いを見せております。歌ネットでも歌詞掲載直後からアクセスが集中し、2月9日にデイリーランキング3位、2月10日に2位を記録。ますます人気上昇中です!尚、作詞作曲を手がけたのは椎名林檎。歌詞を読むだけでも、漢字の使い方や文字数の整ったフレーズ並びから“林檎技”を感じますねぇ…。さて、今日のうたコラムでは、ドラマの内容と併せてそんな主題歌をご紹介!

 ドラマ『カルテット』は、とある理由からカルテット(四重奏)を組むことになった女性2人(松たか子&満島ひかり)、男性2人(高橋一生&松田龍平)の共同生活を中心に物語が描かれております。そして、そこで繰り広げられる“会話劇”がこの作品の大きな見どころなのです。「誰かと食事をする際、から揚げにレモンがついてきたら?」、「“連絡しますね”という言葉の<行間>に隠されている意味は?」、「ボーダーの服が誰かと被らないためには?」…、そんな日常生活の中の些細な(しかし大きな亀裂へと繋がっている)問題が次々と視聴者にも投げかけられます。

真っ新な子供時代教科書を暗記していれば
正解不正解どちらかを選べると思っていた
「おとなの掟」/Doughnuts Hole

 他にも、「壁に迷いなく画鋲が刺せるか問題」や「誰かがやってくれると思ってゴミを捨てなかったらどうなるか問題」、「大人の女性は告白してはいけない問題」などなど。それはまさに、歌詞の中に綴られている<真っ新な子供時代>に<教科書を暗記して>いるだけでは決してわからない答えであり、生きていくなかで人間がそれぞれ“自分の常識”として身につけていく多くの「おとなの掟」なのでしょう。生きていくための“知識”とも言えます。しかしドラマを観ていると、様々な問題について考えさせられると同時に、大人ってなんて面倒なんだろう、という気持ちもむくむく…。

手放してみたいこの両手塞いだ知識
どんなに軽いと感じるだろうか
言葉の鎧も呪いも一切合財
脱いで剥いでもう一度
僕らが出会えたら

好きとか嫌いとか欲しいとか
口走ったら如何なるでしょう
ああ白黒付けるのは恐ろしい
‥切実に生きればこそ‥
「おとなの掟」/Doughnuts Hole

 …そうなんです。積み重ねてきた常識も、知識も、時に<言葉の鎧>や<呪い>として自分を不自由にしてしまうことがあるのです。『カルテット』に登場する4人もまた、両手をそういった類のものに塞がれております。現在、ドラマは第4話まで放送されましたが、その己で作りあげた不自由さにより、ここから4人の関係は大きく歪んでいく模様。<もう一度 僕らが出会えたら>…このフレーズは今後の4人の叫びである予感がします…。ちなみに、先日放送された第4話では次のセリフで幕を閉じてゆきました。

あなたといると二つの気持ちが混ざります。
楽しいは切ない。
嬉しいは寂しい。
優しいは冷たい。
愛しいは空しい。
愛しくて愛しくて空しくなります。
語りかけても触ってもそこには何もない。
じゃあ僕は一体何からあなたを奪えばいいんですか?
(『カルテット』第4話より)

 失踪してしまった旦那さんを待ち続けている女性(松たか子)に対して恋心を伝えた男性(松田龍平)が放ったセリフです。<好きとか嫌いとか欲しいとか>口走って、<白黒付けるのは恐ろしい>けれど、それでも<滅びの呪文>を唱え続けている彼には、これからどんな未来が待ち受けているのでしょうか。また、今もっとも“謎”が多い彼女(松たか子)はどんな事実を秘めているのでしょうか。ドラマの展開も、主題歌「おとなの掟」の今後の人気上昇も、楽しみでなりません。