晴れた時ばっかじゃない、湿った日が続いても腐らぬように。

 <「雨上がりの空に七色の虹が架かる」>…というフレーズで幕を開けるのは、Mr.Childrenの新曲『ヒカリノアトリエ』です。現在放送中のNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』主題歌としても注目を集めている楽曲。そして、2017年にデビュー25周年を迎えるミスチルのスペシャルイヤー第1弾を飾るニューシングルとして、1月11日にリリースされました。さて、冒頭で始まりのひとフレーズをご紹介しましたが、パッとこの一行だけ聴いて(よくある言葉だなぁ…)と思った方もいらっしゃるでしょう。しかし桜井和寿さんの歌詞は“そんなに単純じゃない”のです。

「雨上がりの空に七色の虹が架かる」
って そんなに単純じゃない
この夢想家でも
それくらい理解ってる

大量の防腐剤
心の中に忍ばせる
晴れた時ばっかじゃない
湿った日が続いても腐らぬように
『ヒカリノアトリエ』/Mr.Children

 歌の主人公は、ポジティブな常套句についてとても冷静で客観的です。それを自覚しているからこそ<大量の防腐剤>…おそらく自分を支えるような“何か”をいつも心の中に忍ばせているのだと思います。そのため、捻くれて腐ってネガティブに陥るのではなく、<そんなに単純じゃない>と心得た上で、再び冒頭の「雨上がりの空に七色の虹が架かる」というありきたりな希望のメッセージを見つめなおしていく様子が、歌が進むにつれ、伝わってきます。

たとえば100万回のうち
たった一度ある奇跡
下を向いてばかりいたら
見逃してしまうだろう

さぁ
空に架かる虹を今日も信じ
歩き続けよう
優しすぎる嘘で涙を拭いたら
虹はもうそこにある
『ヒカリノアトリエ』/Mr.Children

 桜井さんはこの曲について『「べっぴんさん」との出会いが、僕らにまっすぐな希望の歌を与えてくれました。ひたむきな物語にそっと寄り添えるような曲でありたいと、強く願っています』とコメント。その言葉のとおり、サビでは<空に架かる虹を今日も信じ 歩き続けよう>とただ真っ直ぐにひたむきな思いを綴っているのです。奇跡は単純なものではないと知ってはいるけれど、下を向いて見逃してしまうくらいなら、それでも信じることを選ぼう…それがこの歌の主人公を突き動かす“強さ”なのでしょう。
 
 まさに『べっぴんさん』の主人公と『ヒカリノアトリエ』の主人公の“強さ”は重なるところがありますよね!ちなみに、Mr.Childrenの楽曲には『ヒカリノアトリエ』の他にも、ポジティブな常套句やありきたりなフレーズを、一歩引いて冷めた思考で捉えながらも、それを主人公なりに“生きるチカラ”に変えていくような楽曲が多いような気がします。

「出来ないことはない」「どこへだって行ける」
「つまずいても また立ち上がれる」
いわゆるそんな希望を 勘違いを 嘘を
IDカードに記して行こう
「fantasy」/Mr.Children

(Aメロ)
目指したものが 自分とはあまりにかけ離れてて
どうせあそこには 届くはずがないんだって吠える
「なんとかなるさ」「ケ・セラ・セラ」
「It's gonna be alright」
そんなフレーズさえも とんだ戯言に思える

(サビ)
Oh No! Oh Yes!
あと一歩のとこまで きっと来てる
そうやって言い聞かせて
もっと もっと
輝ける日は来る きっと来る
もう少し そう信じて
「End of the day」/Mr.Children

「愛は消えたりしない 愛に勝るもんはない」
なんて流行歌の戦略か?
そんじゃ何信じりゃいい?
「明日へ向かえ」なんていい気なもんだ
混乱した愛情故に友情に戻れない
男女問題はいつも面倒だ
そして恋は途切れた
一切合切飲み込んで未来へと進め
「ありふれた Love Story 〜男女問題はいつも面倒だ〜」/Mr.Children

 これらの楽曲を聴くと、ありがちな前向きなフレーズを“キレイゴト”や“勘違い”や“嘘”と捉えてあざ笑ったまま終わるのか、それともそれを“希望”として信じて突き進むのかは、その人次第なんだということがわかりますね。Mr.Childrenの歌詞は、根っことなる大事な“希望”の部分は大切にしながらも、その根っこの周りの表現の仕方をたくさん持っているバンドなのでしょう。それが、長年『歌詞が良いアーティスト』として愛され続ける秘訣なのかもしれません!尚、ニューシングルに収録されている名曲「つよがり」や「くるみ」、「CANDY」、「ランニングハイ」の歌詞も非常に人気ですので、是非、改めてチェックしてみてください!

◆New Single「ヒカリノアトリエ」
2017年1月11日発売
TFCC-89625 ¥1,389+税

<収録曲>
1.ヒカリノアトリエ
2.つよがり(Studio Live)
3.くるみ(Studio Live)
4.CANDY(Studio Live)
5.ランニングハイ(虹 Tour 2016.11.7 FUKUI)
6.PADDLE(虹 Tour 2016.10.14 KUMAMOTO)