秋のセンチメンタルな気分にふさわしい<恋の終わり>の歌…。

ヘッドホン 外した時の 静寂に
どこか似ている 恋の終わりは

 歌人・佐藤りえさんの作品です。音楽を愛する皆さんなら、なおさらこの心情がわかるのではないでしょうか。大好きな曲が鮮やかに心を彩ってくれていたのに、ヘッドホンを外した瞬間、部屋のシーンとした静寂に引き戻される感覚…。だけど、まだ少し頭の中に歌の余韻が残っているような感覚…。まさに<恋の終わり>にふさわしいたとえですよね。なんだかセンチメンタルな気分になりがちな秋ですので、今日のうたコラムでは新譜からそんな<恋の終わり>を描いた3作の新曲をご紹介いたします!

次の週末はどこに行こうか
もう君はいないのに いつもの癖で考えていた
距離を置こうと言った僕の前で
意味が分からないよと泣いてた君は 今頃...Ah

独りよがりだったのかな
半分意地になってたのかな
それが二人の為だと信じていたんだ
君のことが好きだったんだ

思い出になれ 思い出になれ
君といたこの町も この店も 君の笑い声も
思い出になれ 思い出になれ
何度も好きだと言わされた日も 君の泣き顔も
「思い出になれ」/奥華子

 まずは“奥華子”が9月21日にリリースした約1年ぶりの新曲「思い出になれ」です。この曲は『男性目線』で描いた失恋ソング。片方が「距離を置こう」と言った場合、大抵はそのまま自然消滅になってしまうことが多いですよね…。<寂しさに負けた君のこと どうして許せなかったのかな>というフレーズから、もしかしたらお相手の女性=“君”は違う男性に心が移ってしまったのかもしれません。そして“僕”は、もう元の関係には戻れない大切な人への想いを断ち切るために、すべて<思い出になれ>と、何とか前に進もうとしているのです。

買い物も1人でして 暗い部屋にタダイマって言って
今日も意味のないまま過ぎてしまうのがホントは怖いよ

消せない写真をもうダメって分かってるのに
まだ見てる私は 子供のままで
笑い合った日に出会った日に戻れたなら
願いは1つ 聞きたくない「じゃあね」

何が足りなかったんだろう?
もっと愛していたら今日も隣にいたのかな?
ニセモノでも もっと可愛い女のフリしたら
この恋を 失わずいられたかな?
「じゃあね」/Dream Ami

 お次は“Dream Ami”が10月19日にリリースする3rdシングル「Lovefool -好きだって言って-」のカップリング曲。作詞は“Jam9”が担当しました。もう買う物は一人分でいいこと、部屋に帰っても彼はいないこと、新しい思い出は増えていかないこと、わかっているのに、未練から逃れられずにいるのは<何が足りなかったんだろう?>と、恋を失ってしまった理由がわからずにいるからでしょう。「もしも自分が〜だったら」「あのとき〜してれば」と自分を責める“たられば”ばかり考えてしまうのは、失恋後の苦しみのひとつ。どうしたって「じゃあね」は悲しい言葉ですが、できることならお互いに納得した上でさよならをしたいですね…。

謝りたいな もう遅いかな
あの頃の傷ってこんな痛いの
中途半端な約束だけが
今も胸の中 宙ぶらりのまま
あなたもそう?

漂ってる あなたもそう?

僕とあなたの選んだ道は
いつかまた重なる日はくるの
愛してるとか さようならとか
伝えたかった言葉 こだまする
「kodama」/Salley

 最後は、Salleyが9月28日にリリースした新曲「kodama」です。この主人公がまだ過去の恋に焦がれている理由は「ごめんね」「愛してる」「さようなら」伝えたかった言葉を何一つ伝えられなかったから。そうしてある日やって来た別れに抗うこともできず、ふたり別々の道を歩んでいってしまったのでしょう。言えなかったいろんな言葉は自分の心の中だけで何度も何度もこだまするように繰り返されているんですね。また、この曲のMVはボーカル・うららが初のダンスに挑戦した楽曲でもあり、歌詞とリンクする切な美しい動きにも注目です。

 恋を失ってしまった理由はそれぞれですが、ご紹介した3曲ともやはり主人公がまだ<ヘッドホン 外した時の 静寂に>打ちひしがれているような印象を受けます。そして脳内にかすかに残る歌のように、心の中で大切な人との日々や想いが揺らいでいるのでしょう…。最近、恋人と倦怠期だという方、いらっしゃいませんか? 恋を失ってから後悔するその前に、「本当に距離を置くべきなのか」、「今、彼が不満・不安に思っていることは何なのか」、「伝え損ねている言葉はないか」、音楽を聴きながら考えてみてください…!