良い日も悪い日も一緒に生きてきたから特別な人になっていったんだ。

 2020年2月12日に“SCANDAL”がプライベートレーベル“her”より第1弾アルバム『Kiss from the darkness』をリリース。アルバムには全11曲が収録。ボーカルのHARUNAは「自信をもって言います、まじで最高のやつです。4人のクリエイティブなエネルギーが大爆発してます」と今作がメンバーにとってかなりの意欲作であることを語っております。
 
 そして、今日のうたコラムでは、多くの楽曲で作詞を務めたドラムのRINAによる歌詞エッセイを3週に渡りお届け!今回は第1弾第2弾に続く最終回。綴っていただいたのは、収録曲「」にまつわるお話。大人になって、会えなくなってしまった特別な誰かの顔を思い浮かべながら、読んでみてください。

~最終回歌詞エッセイ「」~

仕事から早めに帰宅できた日は、家で夜ご飯を食べられるのが嬉しい。Netflixでドラマの続きを再生し、ゆっくり湯船に浸かる。あっという間に時間が経って、なんだかんだで気が付けば日付けは変わっている。今日をやり終えた少しの達成感と疲労感を連れてベッドに潜り込む。

深夜って“完全に自分だけの時間”って感じがして好きだ。そういえば昔から、どちらかというと夜型だった気がする。窓から見える景色は変わったけれど、視界を遮るものが何もない静かな地元の空も、ビルの隙間を埋める東京の狭い空も、良い。

アラームをセットしながら、明日のことを考える。特に意味もなくぼんやり誰かを思い浮かべたりすることもある。生活感のあるラブソングを沢山リリースできるようになってから、ファンレターやSNSで恋愛や日常のことについて書いてくれる子も増えた。その度に、自分たちの音楽も誰かの生活に入り込めるようになったことを実感できてうれしくなる。

「月」という曲は、アルバム『Kiss from the darkness』のラストに収録されている。タイトルを直訳すると“暗闇からのキス”となるけど、「きっと、いつかは全てなんとかなる。明日はくるから。」―そんなイメージで付けたタイトルだ。コレのひとつ前に『Happiness from darkness』というアイディアがあった。つまり、そんな感覚。

いつでも会えると思っていた人と、次に会う約束が出来なくなったとき、ひとり置いてけぼりにされたみたいで急に不安になる。なんとなく漂う予感をキャッチして心の準備をしていたつもりでも、“別れ”はどちらかにとって突然やってくる。あの時、ああしておけば…みたいな後悔が涙になって溢れてくる。部屋中に落っこちてる思い出に囲まれて、何も手につかなくなる。

だからといって、少しでも早く復活しようとその後悔を無かったことにするのは、楽しかった記憶までもを薄めてしまうことになる気がする。良い日も悪い日も一緒に生きてきたから特別な人になっていったんだと思う。だから別に何も忘れなくて良いし、立ち止まっても泣いてもいいのだ。心にぽっかり月みたいな穴を浮かべたまま、出会えて良かったとお互いに思えるようになれたら、それは本当に大切に想い合えてきた証拠だと思う。

大人になるたび会いたくても会えない人が増えてゆくのかもしれないけれど、何があっても最後まで明日はやってくるし、全部なんとかなるはずなのだ。例えば、今ネガティブな気持ちから抜け出す出口が見えなかったとしても、全ては永遠じゃない。センチメンタルな夜にも、いつも通りにただ小さく光ってる月明かりみたいな曲ができた。

<SCANDAL・RINA>

◆紹介曲「
作詞:RINA
作曲:MAMI

◆Album『Kiss from the darkness』
2020年2月12日発売
通常盤 VICL-65310 ¥3,000+tax
初回限定盤A VIZL-1706 ¥4,000+tax
初回限定盤B VIZL-1707 ¥3,800+tax
完全生産限定盤 VIZL-1708 ¥8,500+tax

<収録曲>
1. Tonight
2. マスターピース
3. Fuzzy
4. 最終兵器、君
5. ランドリーランドリー
6. NEON TOWN ESCAPE
7. セラミックブルー
8. 記念日
9. まばたき
10. A.M.D.K.J.
11. 月