言葉の達人

SAKUSHIKA

 達人たちは1曲の詞を書くために、言葉を巧みに操り、その時代を象徴する言葉を探した。その言葉は多くの老若男女の心を掴んで離さず、その歌は大ヒットした。
「孤独がつらく感じるとき」、「愛することがよくわからなくなったとき」いつも、勇気と力を与えてくれた…、作詞家は言葉の魔術師である。そんなプロの「作詞家」の皆さんをゲストにお招きして、毎月、紹介していくこのコーナー。
今回は、1986年の春に出したCHAGE&ASKAの「TURNING POINT」というアルバムで、作詞家としてデビューし、その後、早見優、西田ひかる、光GENJIなどの作品を手掛け、デビュー以来会社員と作詞家という二足の草鞋を履いて活躍されている「澤地隆」さんをゲストにお迎え致しました。

澤地隆

代表作

CHAGE&ASKACount Down
MULTI MAXSOME DAY」「WINDY ROAD」「勇気の言葉
早見優NEWSにならない恋
西田ひかるプン プン プン
光GENJITAKE OFF
佐々木ゆう子恋はC'est si bon
明石家さんまシングル・ベッド

作詞論

歌詞は詩とは違います。曲にのって、聴いてみて、いいかどうかです。
そして、さらに読んでもいいかどうか。簡単な言葉で、そんなふうに心に染みる詞が書けるよう、よく遊びよく学んでいます。しっかりしたテーマ、感じるタイトル、どこにでもある生活、ああそうそうと思える感情、明日へ続く道・・・詞を書く時に大切にしていることです。

澤地さんに伺いました。
Q:
作詞家になったきっかけは?
A:
音楽が好きで好きで、幼稚園の時からピアノを習い、高校生の時からバンドを始め、オリジナル曲を作り、大学生の時にはデビューを目指していたのに、ふとしたきっかけでお誘いを受けて、気がついたら作詞家になっていました。
Q:
プロ、初作品について
A:
1986年にCHAGE&ASKAのアルバム「TURNING POINT」におさめられた「キャンディー・ラブになり過ぎて」「キューピッドはタップ・ダンス」「ショート・ショート」「HIDARIMEが感じてる」の4曲です。
Q:
作品を提供したいアーティスト
A:
もちろんすべてのアーティストです。が、現実的なことを言うと、アーティストだけではなく、プロデューサー、ディレクター、スタッフなどが楽しくて、みんなで音楽を育てているという感じのプロジェクトがいいですね。
Q:
あまり売れなかったが、私の好きなこの歌
A:
どこから売れなかったというのか難しいところですし、アルバムの中の曲まで考えるときりがないのですが、シングルの中から強いて言えば・・・
時任三郎「Reason」
浅井ひろみ「生まれてはじめて」
黒田有紀「こんな日曜日」。
Q:
なぜ「詩を書くことを選んだか」
A:
音楽が好きで好きで、将来曲を書いたり、バンドでデビューしたりするきっかけになればと思ったからです。特に詞にこだわったわけではありません。音楽に接していられればよかったことと、若かりし日の勢いです。
Q:
プロの作詞家になりたい人へのアドバイスを
A:
作詞家は詩人でも小説家でもありません。音楽を作るのだということを忘れてはいけません。
曲が書けたり、楽器ができたりするとよりいいですね。あとは、いい物をたくさん見て、いろんな経験をして、しっかり心で感じとめる毎日を送ることが大切だと思います。
歌詞を見る レノンのミスキャストCHAGE & ASKA

この詞ができるまで、何度書き直したことでしょう。
何回書いてもプロデューサーとCHAGEさんのOKがでず、気分転換に夜中までみんなで飲んで、そのまま明石家さんまさんの公開ラジオ番組に押しかけて、明け方タクシーで帰宅し、ほんの2時間ほど寝て、起きた瞬間にこの詞のテーマが降りてきたんです。あとは言葉がわきあがるように出てきて、どこを削るかが大変でした。その日のレコーディングで、みんなが気に入ってくれた時のことや、さらにスタジオで少しだけ手直しをしたことなどは、今でも忘れられません。

■私の好きなあのフレーズ
カレンダーのとなりに いたずらにはった
「誓いの5ヶ条」には そうね 書き忘れていたわ
別れる時の約束事と 別れたあとの身のふり方と

PROFILE

1961年4月8日生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。
キーボーディストとしていくつかのバンドに参加したのち、1986年作詞家としてデビュー。
CHAGE & ASKA、MULTI MAX、郷ひろみ、西田ひかる、田原俊彦、佐々木ゆう子他、数々のアーティストに詞を提供。

[CDリリース情報]

「THE STORY of BALLAD」
CHAGE&ASKA

YCCR-10001
2004.11.03発売
M3;レノンのミスキャスト
M5:夏の終わり
M8:ショート・ショート

【これまで登場した作詞家さん】バックナンバー