Q)歌の歌詞については、どういう風に捉えていらっしゃいますか?
デビュー当初の佐伯孝夫先生の時代、いわゆる歌謡曲の時代の作品は、「五七五」あるいは「4行詞」「6行詞」でしょ、あまりにも簡潔に書かれているから、詞の深みっていうのが、50代になるまであんまり感じなかったんですよ。もともと僕は、どちらかと言うと、詞よりもメロディの方が耳に入るタイプだしね。でも、最近、ようやく、詞のすごさを改めて感じてるね。

最近はね、字足の長い歌詞が多くなってきて、でも、本来、作詞って、どうやって行間を詰めるかっていう作業でしょ。簡潔にまとめるという力が、昔の作詞家にはあったよね。「歌詞」は「詩(うた)」であって、そこが良かったんでしょうね。それが、今の人は、ほとんど出来ないからね。日記みたいだよね。それはそれで、いいものもあるんだけど、でも、本来の歌詞ってのは、そういうもんだと思うし、僕らの時代はそういうのを歌ってきたからね。

でも、たしかに、字足らずというか説明不足な面もあることは事実だよね。「想像力はかきたてるけど、わけわかんねぇよ」って歌もいっぱいあるんだよね(笑)。でも、それがいいんだよね。

Q)そうやって、あらためて「この歌詞はすごいなぁ」と思われた曲を教えてください。
たくさんあると思うんだけど、たとえば、昭和56年、星野哲郎先生の「法師の宿」は、叙情歌として傑作ですよね。情感あふれる「沁みる詞」ですね。あとは、阿木燿子さんが書いた「」(昭和59年)って曲は、本当に女の心情がよくあらわれているすごい歌ですよ。あと、股旅ものではね、阿久悠さんが書いた「またたびの詩」(昭和53年)。これは、股旅ものとしてはすごい詞ですよ。

Q)とくに印象的な作詞家は誰でしょうか?
やはり、デビュー当時は、佐伯孝夫先生ですね。親子みたいなもんだし、人間的にも尊敬しています。本物の詞を書く人ですね。偉そうじゃないし、飄々としていて、それで、ふらっとどっか行っちゃって、1ヵ月くらい帰って来ないんですよ(笑)。そうやって股旅もの書いてたんですよ。詩人なんですよね。もともと新聞記者だったから、世の中の動静には敏感だったしね。幅の広さでは、佐伯先生が一番じゃないかな。

<佐伯孝夫・作詞、橋幸夫の代表作>
「潮来笠」「いつでも夢を」「恋をするなら」「江梨子」「恋のメキシカン・ロック」「シンガポールの夜は更けて」、など

あと、僕の歌では、ほとんどないんですけど、岩谷時子さん。そして、佐伯先生のあとは、股旅ものだとやっぱり阿久悠さんかな。阿久さんには、僕がお願いしたんですよ。「先生、ぜひ股旅に挑戦して下さい!」って言ったら、「あぁ、いいねぇ、書きましょうか!」って言ってくれてね。それで、十数曲書いてくれて、アルバムが出来たんですよ。あと、最近だと、「盆ダンス」の木下龍太郎さんかなぁ。亡くなっちゃったけどね。木下さんは、惜しかったなぁ…。

Q)これまで、歌詞を見て気に入らなかったことはありますか?
それが、あるんですよ…(笑)。「子連れ狼」のちょっとあとに、その当時のディレクターが「泥んこ」(昭和53年)って歌を持ってきたんですよ。ドロドロになって這いつくばって…っていう人生の歌なんだけど、「この世界がオレにあるのか?」って思って、「これはないんじゃないの?オレに合わないでしょ!」って言いましたよ。最も嫌いな世界観だからね。それで「いやだ!」って散々言ったんだけど、無理やりやらされた(笑)。ディレクターとして「タレントを見てないなぁ〜」って思いましたね。それ以来、この歌は一切歌ったことないですよ(笑)。

 


Q)御三家の頃は、みなさん仲は良かったのですか?
良かったもなにも、あの頃は、お互いほとんど逢わなかったですね。年末くらいなもので。7年くらい前に、御三家で1年間、コンサートやったんだけど(平成12年〜13年「御三家メモリアルコンサート」全国120公演)、あの時が初めてだよね。ちゃんと付き合ったのは。仲良くやってたんだけど、終わってからは、また逢わなくなっちゃって…、まあ、そんなもんなんだよね。

Q)ビクターではなく、コロムビアからデビューしていたら、芸名は舟木一夫だったという話は有名ですが、本当ですか?
事実ですよ。あの名前は、もともとは、遠藤先生が僕に付けてくれた名前なんですよ。面白い話ですよね…、人生変わってただろうね(笑)。

Q)台湾では、橋さんの「雨の中の二人」のカバーが大ヒットして、誰もが知っている国民的ヒット曲になっているようですが?
そうだってね。あんまり知らないんだけどね。でも、それで呼ばれてて、来年(2011年)4月に行くんですよ。嬉しいですね。

Q)ところで、インターネットは、使われますか?
使っていますよ。おもに買い物ですね。最近だと、ユニクロのトレーナーとかね。もう、ネットで買えないものはないよね。あとは、辞書がわりだね。

Q)ユニクロの洋服はお好きなんですか?
好きですよ。ついこの前も、銀座のユニクロ行きましたよ。デザインもいいし、なにしろ安いしね。あれじゃあ、同じようなものでも何倍もの値段のブランドものは売れないよね。でも、それが本来あるべき姿なんだよ。今までの流通がおかしいんだよ。

Q) カラオケに行かれることはありますか?
このごろはないですけど、20年くらい前は行ってましたね。その時は、僕の歌はほとんど歌わなくて「I LOVE YOU」とか「シクラメンのかほり」とか、昔の三橋さんの歌とかだね。でも、カラオケって、たしかに日本人が作り上げた文化なんだけど、それまでは歌を聴くだけで満足してた人たちを、参加させてしまったっていう側面もあるよね。

Q) これまで、もらって嬉しかった贈り物は何ですか?
昔、5円玉とか50円玉で作った五重塔を頂いたことがあって、驚きましたね。最近だと、ワインが嬉しいですね。赤ならオーパス・ワン、白ならシャブリですね(笑)。ちょっと前までは焼酎だったんですけど(笑)。

Q) 今、欲しいものは何ですか?
電気自動車ですね。もう売ってますけど、今の車を買ったばっかりだから、3年後くらいですね。その頃には、もっと良くなっているでしょうね。

Q)よく見るテレビ番組、よく聴くラジオ番組を教えてください。
ほとんどテレビですね。ニュースだけですけど。うるさい番組は見ないですね。


Q)今、一番楽しい時間は、何をしている時ですか?
最近、インテリアにしたくなる書「キャレモジ」(Carre Moji)というのをやっていて、それを書いてる時が一番楽しいね。もともと、書道を習っていて、草書、行書、楷書、全てやったんだけど、書道の先生になるわけじゃないし、だんだん、つまんなくなってきたんですね。そんな時に、たまたまテレビで、キャレモジを書いている女性が出ててね、これは面白いと思って、それで、その先生のところに入門したんです。月2回、習いに行ってるんですよ。あとは、フルートを吹いている時が楽しいかな。

Q)音楽以外で、何かやってみたいことはありますか?
家をリフォームして、プランターとかで屋上菜園みたいなのをやってみようと思っているんですよ。還暦すぎてから、これまでずっと家庭を顧みることがなかったという反省も含めて(笑)、家庭の中での楽しみを作っていきたいと思っていて、その一環ですね。それと、だんだん、食事もエコになってきて、自家製が重んじられる時代だし、小さい野菜とかは、プランターとかでも十分できちゃうでしょ。だから、そういうのを楽しみながらやろうと思っています。

Q)もしも生まれ変わるとしたら、何になりたいですか?
今でも興味あるのは、建築の設計士ですね。もともと絵が好きで、中学のころは、製図が大好きでしたね。家を建てる時も、建築現場に行って、職人とああだこうだ話すのが好きでね。来年リフォームするのも、僕が全部、図面を書いてますから。

Q)最後に、今の音楽業界を、どう感じていらっしゃいますか?
大変な危機ですよね。危機感ありますよ。自分のことじゃなくて、本当に日本の音楽業界どうなっちゃうんだって思っていますよ。根本は、アナログからデジタルに変わったことが原因でしょうけど、これほど、音楽が変わるとは思わなかったもんね。形すらなくなったもんね。だから、これからも、僕らが想像できないくらい変化していくんでしょうね。

でも、歌を作って記録する媒体が、レコードからCDになって、今では、物体としてなくなっちゃって、全部ダウンロードじゃあ、あまりにも儚いよね。歌ってなんだろう?って思っちゃうよね。これまで、情感としてやってきた部分が連綿とあって、それが完全に破壊された感じがするね。さみしいね。今の若い子たちは、知らないからそれでいいんだろうけど、昔を知ってる人たちが、それでいんだろうかって考えなきゃいけないよね。

だから、レコード会社がなくなるとか、そういったことではなくて、日本の音楽業界はどうしてゆくべきかってことは、みんなで考えるべきことだね。まずは、マーケットを作っていかないとね。願わくはね、たとえば、どっかの大メーカーが、県庁所在地全部、日本全国で50か所くらいに、歌謡曲系、演歌系のやれるライブステージを作ってほしいね。アマチュアばかりだとマイナーな感じになっちゃうから、プロも出演するステージを作っていかないとね。そこで、いい人がレコードを出すみたいなシステムを作っていけばいいんじゃないかな。アメリカとかは、ずいぶん前からそうなっているけど、そういうことを何かやっていかないと、アメリカみたいなスタンダード曲は今後、生まれてこないと思いますよ…。

(2010/10/01、取材・文:西山 寧)

 50周年記念アルバム「道程(みちのり)」

2010年6月18日発売
¥5,000-(税込)
VIZL-584
VICTOR ENTERTAINMENT



#1-CD
01 潮来笠2010(三味線スペシャル)
02 江梨子2010(アコースティックアレンジ)
03 雨の中の二人2010(ストリングスアレンジ)
04 恋をするなら2010(エレキギターアレンジ)
05 シンガポールの夜は更けて(ニューボーカル)
06 さわらびの丘(ニューボーカル)
07 あなたをつれて(ニューボーカル)
08 北国の白い花(ニューボーカル)

#2-CD
01 いつでも夢を
02 子連れ狼
03 舞妓はん
04 佐久の鯉太郎
05 霧氷 {霧氷=むひょう}
06 今夜は離さない
07 京都・神戸・銀座
08 恋のメキシカン・ロック
09 風の三度笠
10 喧嘩旅
11 月夜の渡り鳥
12 以蔵残月
13 故郷の花はいつでも紅い
14 乙女川
15 今日子
16 この世を花にするために


#3-DVD
盆ダンス
花火音頭
いのちのうた(コロブチカ)
ゆるキャラ音頭
母を恋うる歌
生きて、悔いなし

 50周年記念シングル「生きて、悔いなし」  

2010年6月18日発売
¥1,200-(税込)
VICL-36588
VICTOR ENTERTAINMENT

01 生きて、悔いなし
02 旅の支度
03 生きて、悔いなし(オリジナルカラオケ)
04 旅の支度(オリジナルカラオケ)

芸 名  : 橋 幸夫
本 名  : 橋 幸男
生年月日 : 1943年(昭和18年)5月3日
出身地  : 東京都荒川区
血液型  : A型
趣 味  : スポーツ (ゴルフ、野球、テニス、柔道、空手、ボクシング)

吉田正、遠藤実に師事し、昭和35年(1960年)「潮来笠」でビクターレコードよりデビュー。日本レコード大賞新人賞第1号受賞者となる。その年から「NHK紅白歌合戦」に連続17回出場し、これまでに計19回出場。その後、「股旅歌謡・リズム歌謡・ムード歌謡」でヒットを連発し、昭和37年「いつでも夢を」、昭和41年「霧氷」で二度のレコード大賞受賞。現在までに発表した曲は500曲を超える。昭和63年、日中国交正常化15周年記念として上海でコンサートを行い3万人を集める。平成元年には、老人性認知症となった実母と橋幸夫一家の物語を描いた「お母さんは宇宙人」がベストセラーとなり、その体験を語った講演は700回を超える。平成12年「文部大臣特別感謝状」受賞。また、平成12年〜13年には「御三家メモリアルコンサート」として、日本全国120ヶ所で公演を行う。2009年には、「警視庁/振り込め詐欺被害防止特別アドバイザー」に任命される。最近では、インテリア書道「キャレ文字」(Carre Moji)も評判で、個展も開かれている。今年、2010年は、歌手生活50周年を迎え、記念コンサートのほか、記念アルバム『道程(みちのり)』、記念シングル『生きて、悔いなし』を発表。

橋幸夫 オフィシャルサイト
橋幸夫 レコード会社サイト / ビクターエンタテインメント
橋幸夫 キャレモジ作品

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