改めて“30歳の女性”として思う部分を書きたかった。

―― ここからはその“日常で感じること”が反映されている、アルバム曲についてお伺いしていきます。まず1曲目の「カラフル!!」は、歳を重ねることが楽しくなってくるような歌ですね。

嬉しいです!とってもポジティブな曲ですよね。大サビにさっきも言った<色の無い時代 Hello 私らが色になる>っていうフレーズがあるんですけど、それが一番大きなメッセージとしてあります。今ちょうど私は30歳で、進化していく新しい時代の便利さと、昔の古き良き温かさの両方を知っているちょうど間の世代だと思うんです。でも、どんどんAIが発達した時代が来たとしても、AIには表現できないものが絶対にある。狭間にいる世代だからこそ“【変化】を受け入れつつも変わらない大事なものは見失わないように”と、そんな想いも込めました。

―― この歌は<自分史上最高の 人生に幸あれ>というフレーズも、かなり上向きな気持ちにさせてくれます。

photo_01です。

本当に最近そう思うんです。結局、何だって“自分次第”だなって。同じ一日でも「はぁ…ここがダメだったなぁ」「あれが微妙だったなぁ」って終わるのと、「明日に生かす!トータルで見たらハッピーな一日だった!」って口にできるのとでは、圧倒的に後者の方が幸せじゃないですか。それに、歳を取りたくないって気持ちもまぁわかるけど(笑)、人生は一回きりだし、考え方ひとつで全く変わるんだから、常に「今が一番!」「自分史上最高!」って言える、そういうマインドで物事に向き合えたらなって。

―― 4曲目の「センチメント」は、今までとはまた違った絢香さんの歌声を感じました。そばで語りかけられているような。

この曲は、メロディーが出来たとき、すごく狭い世界で、近い距離で歌っているイメージが浮かんだんです。だからなるべくファルセットで、張り上げずに耳元でささやいている感じを意識してボーカル録りをしまして。センチメントの意味は「感傷」。誰しもが胸に抱いている、誰にも見せない切ない感情を歌っています。この曲に出てくる「あなた」は、もう会えない大切な人かもしれないし、探し求めている「夢や希望」かもしれない、叶わない恋の相手かもしれない。そんな「あなた」を思って言葉を綴りました。ボーカルの表現は自分にとって新しかったし、表現の方法がまたひとつ増えたと思えた楽曲ですね。

―― そういう曲が生まれたのには、何かきっかけがあったのでしょうか。

2014年に初めて挑戦した、ピアノとギターと歌だけのアコースティックツアーの影響が大きいですね。去年のツアーもその3人で回ったんですけど、そういう音数の少ない編成でライブをやることが増えています。たとえば、大所帯バンドでのライブだと、それだけの音を聴きながらやっているので、自分の声の細やかな成分って聴こえにくくなるんですよね。

でも人が少ないとそれだけ隙間もあるし、お互いの音をより聴き合うことができる。そうすると、これまで10のうち4~10の幅しか使わなかった幅が、0~10で使えるようになるんですよ。バンドでは見えなかった0~4の部分が見えてくる。あくまでも、私の場合はそうでした。歌の細やかな表現ってとっても楽しいんだということを実感したので、それを活かせる曲を作りたくて「センチメント」が生まれました。

―― 6曲目の「Woman」はオフィシャルインタビューで「もっとキャリアと家庭の組み合わせは女性が自由に決められるようになったらな」という想いも込められているとお話されていましたね。

そうなんです!30歳になって私は、女性として誇らしく生きたいという気持ちがとても強くなりました。だからこそ、改めて“30歳の1人の女性”として思う部分を書きたかったんです。昔と比べて、女性が主体になる事が増えてはきましたが、とは言えまだ差がある。まわりを見ても子育てで何かを諦めたりする女性もいます。それが“もうちょっと仕事と育児が両立できる世の中になって、女性がもっともっと前に出ていけたらな”という想いで。私の周りでも子育てをしているひととか、主婦で頑張っているひとと話していても感じます。

オフィシャルのインタビューでも答えたんですけど、私の大好きなニュージーランドという国の首相はまだ37歳の女性で、最近出産もしました。国連総会の会合に赤ちゃんと旦那さんが一緒に出席していたりする。両立するのは簡単なことではないし、まわりのサポートも必要だけど、キャリアと家庭の組み合わせは女性が自分の意思でどんどん選択できるようになったらなって。そういう想いも込められています。

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