突飛な行動を愛して面白いものが出来たよ。みんなはどうする?

―― 6曲目に収録されている「されど日々は」もとくに印象的でした。アルバム内で派手な役割や位置ではないのに、どこか心にとまると言いますか。ちょっと寂しくて空しい感じがしますね。

この曲は僕自身の心境とすごくリンクしているものなんです。実は先日、ちょっとした軽い手術をしまして。まぁ全く大ごとではなくて、生まれつき持っている石灰がちょっと炎症を起こしちゃったので、それを治すためなんですけど。でも久々に麻酔をしたことによって「あぁ…いつかは身体って壊れちゃうんだよなぁ…」って思ったことが歌詞のもとになっていますね。

―― だから歌詞に<僕をまたひとつ疲れさせて>や<少しずつ壊していく>というフレーズが綴られているんですね。腑に落ちました。

そうなんですよ。この歌だけは、聴いてくれた人にどうこうしてほしいとかではなくて、他の収録曲とはちょっと違うんです。たとえば<昨日から続く両足の痛みを笑ってられるのは 壊れて元通りになることを知ってるから>ってフレーズは、逆に言えば「なかには治らないって思っちゃうような痛みもあるよな」ってことで。それは身体も心も一緒だし、怖いことだよなぁって。そんなふうに「僕はこう思いました」って歌なんです。

―― 9曲目の「Second LINE」は<君からのSOS>を受けて、駆けつけてゆく<僕>の心情が描かれております。このタイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか。

まず歌詞に<透明な救難信号>とあるように、登場人物たちは連絡を取り合ってはいるものの、心の悲鳴を実際に言葉にはしていませんよね。どうしても<君>は素直に頼るのがヘタクソで、だけど「僕にはわかるよ」って助けに向かうんです。だから、普通に“LINE”でやりとりをしていたけど、そのLINEの裏にある透明なメッセージ、第二のメッセージ=「Second LINE」に気づいたよという意味をタイトルに込めたんです。あと、実はこの曲「コーヒーとシロップ」という楽曲の延長線上をイメージしています。

―― あ…!たしかに“救い”という部分で共通していますし、歌詞にも<シロップまみれの瞳にささやかなユーモアを>というフレーズがありますね。

そうそう!僕の中のストーリーとしては「コーヒーとシロップ」で悩んでいた友達を助けに来たぜ!っていう展開なんですよね。そして「コーヒーとシロップ」で歌った<ふがいなさのシロップ>は、なんで自分はこんなにダメなんだろうって思わず流れてしまった涙のことを表していて。一方で「Second LINE」の<シロップまみれの瞳にささやかなユーモアを>というフレーズには、そうやって悩んで泣いてしまったときに少しでも<君>が笑ってくれたらという想いを込めていて。それは同時に、そういう音楽を提供できたらいいなっていう自分達のスタンスも入っているんです。

―― また11曲目の「相思相愛」はタイトルからつい幸せなラブソングを想像してしまいましたが、どうしてこんなに悲しい歌が生まれてしまったんだろうと…。

あはは(笑)。いやぁー本当にこの歌は悲しいですよねぇ。我ながら、救われねぇなぁって。でも本当にツライなかでも、ちょっと“太宰治”的な要素が入ってきてしまうのが僕なんですよね。冒頭の<「最低でクズな男になった気分はどうだい?」>って自虐からしてそうですし。まぁこれを聴いて失恋に浸るも良し。最後の<サンキューグッバイ>で吹っ切ってもらうも良し。いろんな聴き方をしてほしいですね。ただ、僕は振り切れないからこそ、こういう歌詞になってしまったわけですけれども…。だいたい男性は縁を切るのがヘタクソですからねぇ。

―― 聡さんもヘタクソなんですか。

そう、何に関してもヘタクソ。仕事でも「この人と一緒に音楽を作るのはすごく楽しい、でもヒゲダンがさらにステップアップするために、次はこういう人たちとやってみたい」と思ったとき、前のスタッフに対して申し訳ないなぁと思ってしまったり。どうしても八方美人になってしまう自分がいて。気持ちの切り替えに時間がかかる不器用なタイプではありますね。なので「吹っ切りたい!吹っ切った!…つもりだったけど吹っ切れてなかった」っていうのが僕にとっての<サンキューグッバイ…>ですね。「あぁ…サヨナラって言っちまったよ…」みたいな。「相思相愛」はそういう生々しい感情の動きを描くことができた歌詞だと思います。

―― では、選ぶのが難しいかと思いますが『エスカパレード』収録曲の中で、一番好きなフレーズを教えてください。

photo_01です。

うーん、いろいろあるけど一番は最後に収録されている「発明家」の冒頭ですね!<止めないで 反抗期のパレード>。あと<恐れないで 常識のバリケード>。この二箇所は、アルバムを作るうえで最も大事にしたことだと思っていて。何かに対する皮肉や不満があるのなら、それを面白おかしくみんなで共有しようよって。それが僕にとっての<反抗期のパレード>ですね。

―― ご自身の日常でも<反抗期のパレード>は度々起こりますか?

なんか…常識的な「こうやったら売れるよ!」みたいな言葉に対して…。まぁ当然「売れること」への執着はめちゃくちゃあります!ありますけど、全部の音楽を平らにして意見するということが、僕はすごく嫌いなんですよね。だからそういうものを押し付けられると気分が悪くなって、それをパーンッ!と吹っ飛ばしていくような<反抗期のパレード>が必要になります(笑)。まさにそんな自分の内心が歌詞に投影されているんです。

―― 曲調も軽やかで華やかで、ラストに「発明家」があることで、すごくヒゲダンが次のステージへと開けている感じがしますよね。

うん!この曲で終わらせることで「僕らはこんなに突飛な行動を愛して面白いものが出来たよ。みんなはどうする?」って想いを伝えることができるんじゃないかと思っています。この曲を聴き終わってもう一周するでもいいし、新しい気持ちに切り替えてもらえても嬉しいし。とにかく今後、みんなこのパレードに乗っかって、いろんな曲がり角を曲がりながら人生を楽しんでいこうよって伝えたいなぁって。僕らはバンド名に【髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けて行きたい】という想いを込めているだけあって、聴いてくれる人たちを含め、音楽でみんなと一緒に年をとっていきたいんですよね。

―― ありがとうございました!では、最後に歌ネットを見ている方にメッセージをお願いします。

背中を押せる曲もあれば、悲しみに浸れる曲もあって、とにかく自分たちの赴くままに音楽をやりたいというマインドのもとで動いた結果、本当に素晴らしいアルバムが出来たと思っています。今もまた新しい曲を作っている途中なので、どんどんいろんなテーマを歌にして、届けていきたいです。みなさんも、赴くままに感じてもらって、お気に入りの曲を1つでも見つけてもらえれば幸いです!


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