いろんな角度から見た時、傷つく人がいるかもしれない言葉…。

―― 歌詞を書くときに、使わないように意識をしている言葉ってありますか?

やっぱり聴いてくれる人を考えて歌詞を作るということを一番大切にしているので、こう…ちょっとでも誰かが傷つくような言葉には、気をつけるようにしていますね。

―― 誰かが傷つくような言葉…。

いろんな角度から見た時、傷つく人がいるかもしれない言葉ですね。それって、考え始めると果てしないんですけど、実は前に言われたことがあって…。初期の「Traveler」という楽曲で、僕は一人の男性が赤ちゃんからおじいさんになるまでのストーリーを描こうと思ったんです。それで<男は4本足で歩き>、それから<2本の足>で立って、最後は杖をつくから<3本足>で生きてゆくという内容の歌詞を作りました。だけどその曲に対して「生まれつき足が不自由な人はどうするんだ」とか「その人がこの曲を聴いたらどう思うんだろう」とか、そういう意見をいただいて、ハッとしたんですよね。たしかになぁ…って。

―― そうですねぇ…。本当にいろんな立場の人を想像しないと“傷つけない言葉”って難しいですよね。

はい、物事の見方ってものすごくたくさんありますし、自分が見えていないところ、見落としてしまっているところもまだまだあると思います。でも僕は、音楽は人を“救う”ものだという気持ちが強いからこそ、少しでも誰かが傷ついたりしない言葉とか表現、伝え方を選ぶようにしていますね。

―― 逆に、よく使う言葉はありますか?

一番多いのは「光」ですかね。ほとんど“前に進む指針となるもの”を表現するために使っています。でもやっぱり、すべての言葉に対して、人それぞれ感じることって違うじゃないですか。そのなかでもとくに、僕にとってはこの「光」という抽象的なものが、一番大きな存在なんだと思います。

―― 内澤さんは、先ほどおっしゃっていた「ライブ」以外では、言葉の影響をどのようなところから受けることが多いのでしょうか。

僕は、文字というより、絵とか映像であること多いです。その雰囲気とか空気感が言葉になっていく感覚というか…。歌詞を書くときも、言葉を思い浮かべるんじゃなくて、まずは色とか映像をイメージするんです。それが徐々に形を変えて、言葉になっていきますね。

―― 歌詞の面で、影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか?

一番影響を受けているのは“カーペンターズ”だと思います。親がカーペンターズを好きで、いつも家で流していたので、僕も小さい頃からずっと聴いていたんですよ。大人になってから英詞の意味もわかってくるんですけど、歌詞がわからない子どもにも伝わるあの優しさとか温かさとか、心を掴まれる感じがとても好きですね。今でもよく聴いています。

―― では、最近「この歌詞のこのフレーズにやられた!」という楽曲はありますか?

Mr.Childrenの「himawari」って歌詞が素敵だなぁと思いました。とくに<暗がりで咲いてるひまわり>というフレーズのあとに<嵐が去ったあとの陽だまり>と綴られているところが、僕はすごくキュンとして…。美しいですよね。<ひまわり>と<ひだまり>の語感を重ねることで、さらに意味が膨らんでゆくという表現の仕方は、自分もやりたいなぁと思っているところだったりします。こういう綺麗な歌詞を見ると、心を打ち抜かれますね。

―― ありがとうございました。最後にandropのこれからの夢、目標を教えてください。

photo_03です。

僕らが曲作りのときに一番大切にしてきたのは“聴いてくれる人”なので、やっぱりそれを直に伝えられるライブという場所はすごく特別な場所なんです。だから、歌詞を書くときも【ライブで伝わるフレーズ】を意識したりします。ライブで伝わる歌詞はこんなまどろっこしい表現じゃダメだなとか。ライブで感情を込められるような言い回しにしようとか。だからまず、もっともっと多くの人にライブに来てもらいたいというのが夢ですね。

2018年はホールツアーをやるんですけれども、僕らandropの目標は、キャパの大きいとか小さいとか関係なく、席の遠さとか近さとかも関係なく、どこにいる人の心にも同じようにちゃんと音楽を届けるということなんです。だから、ホールツアーの時には、みなさんにそれを確認してほしいというか、それができるバンドになっていたいですね。そして、この記事を読んでくれている方は多分、少しでもandropのことが気になってくれていると思うので、そんなみなさんにライブで歌詞が届いたら嬉しいです。



前のページ 1 2 3