INTERVIEW
“衣食住”こそが幸せなんだと思っています。

では、ここからはニューシングルについてお伺いしていきます。まず「しあわせの詩」は、ドラマ『フランケンシュタインの恋』の挿入歌として書き下ろされた楽曲ですが、歌詞の面では何か“こういうテーマで”という依頼はありましたか?

Uru:日常の普遍的な部分を切り取って、そのなかで感じることをテーマにということでした。あとは、あんまり“僕”とか“私”という一人称にこだわるのではなく、ちょっとこう俯瞰(ふかん)する感じでというか…。

それはドラマの主人公(綾野剛)が、不老不死の“怪物”だからですかね。

Uru:そうですね。でもドラマを観ていると、主人公の怪物の不器用さとかって、私たち人間の生きづらい部分にも重なるなぁって思うんです。そういうものを背負いながら生活していると、特別なことや、非日常的な幸せを願ってしまいがちなんですけど…。歌詞にも書いているように、朝起きたら同じ景色が目に入ってきて、住むところがあって、何を着ようかなって選べる服があって、何を食べようかなって迷える食べ物があって、本当はそれだけですごく幸せなことなんだなって。怪物はずっと一人で森にいたから、その感覚がわからなかったと思うんですけど、人間ってこんな生活をしているのかって体験して、初めて実感するというか。その感覚を歌詞にしました。

その冒頭の<初めに見るいつもの天井 今日はどんな服を着て何を食べようか>というフレーズには“天井”“服”“食”で衣食住が描かれているんですね。幸せって、生活で成り立っているんだなぁということに私も改めて気づかされました。

Uru:まさにそこでは“衣食住”を伝えたかったんです!わかってもらえて今すごく嬉しいです。本当に衣食住こそが幸せだと思っているので。私が一番幸せな瞬間って、寝るときなんですよね(笑)。いつもより頑張ったなぁとかと思って布団に入ったときって、その疲れた体がちょっと心地よかったりして、寝つきが良いんです。より生かしてもらっている感じがして。

photo_01です。

たしかに1番のAメロも<目が覚めて>、<目を閉じて>と眠りについての瞬間が描かれていますね。ではサビの<誰かの言葉が温かくて あなたの笑顔が温かくて 一つ一つ喜びが積もっていく これが一番の幸せ>というのは、布団の中で実感する気持ちなのでしょうか。

Uru:そうなんです。寝るときって、一日のことがフィードバックしてきたりする時間でもあるので、誰かの何気ない言葉に改めてグッときたり、対話した方の顔がフッとよぎったりします。自分は一人じゃなくて、色々な人と生活しているんだという温かさも感じることができる幸せな瞬間だと思いますね。

Uruさんは、今もおまもりのようにしている温かい<誰かの言葉>ってありますか?

Uru:私はこう…一つのことをやると決めると頑固になりやすいというか、手を抜くということにすごく罪悪感があるんです。でも友人に「もうちょっと肩の力を抜いて、上手に手を抜くことで見えてくることってたくさんあるから」ってアドバイスをされて、それは大きな救いになりましたね。

Uruさんのブログなどを拝見していても、素敵なお友達がいらっしゃることが伝わってきます。そういう大切な人からの言葉って響きますよね。

Uru:カバー動画をやっていたときも、やるって決めたんだから人より頑張らないと見つけてもらえないし、ちゃんと歌手になれないって思ったので、遊びに誘われても全て断っていたんです。メールとかLINEのやり取りとかもわざと冷たくして…。でもそれは間違っていて、逆に何も書けないし、何もできなくなってしまいました。それで、友達にさっきのアドバイスをもらったこともあり、たまに遊んだり、散歩したりするようになって、そこでみた景色や生まれた感情が歌に反映できるってことがわかりました。今までなんてことをしていたんだって思いましたね(笑)。だから、それでも離れずにそばにいてくれた友人には今でも凄く感謝しています。

カップリングの「いい男」はまた、ガラッと歌詞の内容が変わって、男性目線の失恋ソングですが、この曲はどんなきっかけから生まれたのでしょうか。

Uru:曲調からして雨っぽいんですけど、実はすごく良い天気の日に生まれた曲なんです。ふと「晴れて良かったなぁ」と感じたときに、こんな天気だったら、たとえば昨日別れ話をされた人も、少しは救われるんじゃないかなぁって思って。そうしたら曲も歌詞も同時にブワーッと降りてきて、今まで作った曲のなかでは最短でできましたし、すごく好きな曲になりました。

歌詞は、好きだけど別れなきゃいけないという一番ツラいパターンの心情ですね。

Uru:この歌の男性は彼女のことが好きだったけど、自信がなかったんですよ、多分。彼のなかにはずっと「君の相手が僕なんかでいいのかな」っていう気持ちがあったんだと思います。でも結局、相手に他の好きな人ができてしまって「あぁやっぱりな、こんな僕じゃダメだよな」…って曲なんです。<抱きしめたくても そうか、もう出番じゃないよな>というフレーズがありますけど、もう抱きしめるのはその新しい彼、なんですよね。タイトルの「いい男」は、“そうありたい”という願望です。

それを聞くとなおさら切ないですね…。最後には<絶対幸せになれよ 幸せになれよ>なんてフレーズもありますが、これは彼の本心だと思いますか?

Uru:それが、最初は<絶対幸せになれよ>を2回繰り返そうと思っていたんです。でも2回目の<幸せになれよ>では“絶対”を取りました。なんか、1回目は本当に心から<絶対幸せになれよ>って言ったつもりなんだけど、それもちょっと寂しくて、<幸せになれよ>になったという気持ちですね。だからこのフレーズには「いい男」としてかっこ良く終わるための強がりもあるんだと思います。



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