INTERVIEW
「一人で生きていける強い女性になりたいと思ってきたけど…」

では、ここからはニューシングル「結露」についてお伺いしていきたいと思います。まずタイトルの由来を教えてください。

片平:タイトルは、歌詞もメロディーも出来たあとにつけました。深い意味を込めたというよりは、曲全体の雰囲気でパッと思い浮かんだのが「結露」という言葉だったんです。普段はあまり使わない言葉ですけど、想像してみると、上から降ってくる雨とは違って、そこに雫が留まっていたり、時間が経つとそれが滴ってきたりという景色も見えてきて。あと、部屋の中に人がいるから窓に結露ができたりするのも、今回この曲がタイアップになっているアニメ『迷家-マヨイガ-』の閉鎖的なイメージにも繋がるなぁと思いました。

毎回『迷家-マヨイガ-』のエンディングで「結露」が流れるとき、視聴者の方にどのように届いてほしいと考えましたか?

片平:『迷家-マヨイガ-』は、トラウマやカルマを抱えた人たちがそこから逃れたくてあるツアーに参加するというアニメなんです。そして行き着いた場所で、それぞれ自分の心の弱いところと向き合っていくような作品なんですけど、かなりスリリングでハラハラする場面も多いと思います。だからアニメを観終わったあと、この曲を聴くことでちょっとでもホッとしたり、心が温まったりしてもらえたらいいなぁという想いで作りましたね。

photo_01です。

「結露」の歌詞には“あなた”という言葉は出てきませんが、相手の存在を強く感じます。この曲の二人はどんな関係なのでしょうか。

片平:どういう二人だろう。『迷家』の登場人物もそうですけど、すごく孤独ですよね。相手の孤独を見つめて、また孤独になって…。でもやっぱりその人の孤独の中には入り込めないし、無理にその人の心の穴を埋めようとすることは絶対に間違っていると思うんです。だから、相手の姿を受け入れてただ隣にいたり、それぞれ孤独を持ち合わせながらも一緒に進んでいったり、そういう関係を描きたいと思いました。

冒頭の<人は待ち合わせたように出会ってく>というフレーズ、素敵ですね。片平さん自身もこの言葉のような感覚を実感されたことがありますか?

片平:そうですねぇ。小中高の時って、ただ用意された場所で生活していましたけど、卒業してからは「自分の求めるものって何だろう?」って考えて、感じて、行動するようになって…。それからは出会う一人一人に対して、感覚的な“縁”を感じるような瞬間がたくさんありました。その人によって自分の心の中のわだかまりが解けていったり、それまで「人ってめんどうだなぁ」と思っていたのが「やっぱり人が好きだなぁ」って思えるようになったり。そういう出会いは今でも多いです。

<ずっと強くなることで掻き消した>というフレーズからは、まさに先ほど片平さんがおっしゃっていたような“闘う強い女性像”を感じます。でもこの曲の後半では<弱くなってゆく私を 愛おしい気持ちで守って>と、弱くなることも受け入れているんですね。

片平:心に鎧をまとってないとやっていけないときもあるし、自分が強くなるのはすごく大切だけど…。誰かに助けを求めることさえ出来なくなってしまうってすごく寂しいことだなぁとも思ったんです。結局「やっぱり人と生きていきたい」という気持ちが、この曲を作りながら自分の中にも芽生えてきましたね。強くなりすぎてしまった人は、逆に弱くなれた方がいいのかもしれないというか…。

ただ、きっと弱くなることにも覚悟が必要ですよね。

片平:どっちも難しいなぁ。あぁでも…私はさっきも言ったように“強い女性”にずっと憧れていて、一人で生きていけるってかっこいいなぁと思ってきたんです。好きになる女性アーティストや尊敬する周りの女性も、そういう生き方の人が多かったですし。だけど最近なんか…ちょっと違うな、と思い始めたんですよね。一人で生きるのも過酷だけど、二人で生きていくのはきっともっと大変で、それでも誰かと向き合って生きようとしている人の方がかっこいいなって。やっぱり他者を通して、自分の弱さも見つけられるし、成長もしていくし…。

そう思うようになったのには何かきっかけがあるのでしょうか。

片平:きっといろんなポイントがあったんだと思います。昔は本当に人間がめんどくさくて、ずっと部屋でひとり音楽をやっていたんです。でもそれが人前で歌うようになって、音楽活動を通して嫌いだった人間と関わるようになって。そういう音楽面のこととか、一人暮らしを始めたこととか、震災があったことも大きいですね。少しずつ、人は人と一緒にいなきゃダメなんだということに気づかされました。

また、サビには<ついた傷は その寂しさは 一体誰が癒してくれるだろう>というフレーズがありますが、片平さんの音楽に出会ったことでそういう苦しみが癒されているリスナーの方もたくさんいると思います。片平さんにも、自分の孤独を救ってくれたような音楽はありましたか?

片平:いっぱいあります。いろんなアーティストの曲があるけど、とくに10代の時に聴いていて救われたなぁと思うのは“10-FEET”とか。自分ってこんなに弱いんだよ、それでもいいんだよって、ああいうロックな人がふざけながら歌っている姿にはすごく励まされましたね。

歌詞の面では、中島みゆきさんや松任谷由実さんにも影響を受けてらっしゃるんですよね。

片平:そうなんです。実はこの「結露」を作っている時にも、中島みゆきさんの「糸」が頭にパッと思い浮かんできて、途中からちょっと意識しちゃいまいました(笑)。



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