INTERVIEW
「今、日本の音楽の歌詞が一番おもしろい時期に来ている。」

Jam9は昨年だけでもAAAやE-Girlsをはじめ、いろんなアーティストに楽曲提供もしていますが、提供曲とJam9の楽曲の違いというとどんな点でしょうか。

Giz'Mo:アーティストによって底抜けに明るい曲が歌える人、強い曲が歌える人、それぞれ違うと思うんですよね。僕らは僕らでわりと幅広いものをやれているとは思うんですけど、それでもやっぱりE-girlsの「Follow Me」みたいな曲は歌えないじゃないですか(笑)。だから、自分たちが歌えないものを誰かが歌ってくれる、キャラクターの違う人が歌ってくれる、という風にうまく循環できているのかなぁと思っています。

ちなみに、今後楽曲を提供してみたいと思うアーティストはいらっしゃいますか?

Giz'Mo:あ〜…僕は“傳田真央”さんっていうアーティストにすごく影響を受けているんですよね。純粋に好きだし、トラックがずっとワンループされていく中にAメロとBメロとサビの展開を作っていく曲の基礎みたいなものを教えてもらった人で。傳田さんはシンガーソングライターなので、僕が提供するなんてことはないんでしょうけど、自分のメロディー、自分の歌詞をこの人が歌ってくれたらどんな風になるんだろうって。ちょっと興味はありますね。

では、最近歌詞が良いなぁと思うアーティストはいらっしゃいますか?

MOCKY:この前、SKY-HIさんのCDを買いまして、それがとても良かったですね。

Giz'Mo:僕はやっぱり傳田真央さんですね。デビュー作は「耳もとにいるよ」という曲で、遠距離恋愛を歌っていて<はなればなれだからって たまに電話すればいいのに>ってフレーズがあったりするんですよね。でも、今リリースしているものって、“すでに相手のいる人を好きになってしまって、どうせ付き合えないけど、抱いてもらえるだけでいい”みたいな、より痛々しい恋愛なんです。それがあまりにもリアルだからこそ、驚くほど心に入ってくるんですよ。あと今、日本の音楽の歌詞が一番おもしろい時期に来ているなと思います。

たしかに、今もうどんな歌詞がヒットするかわからないですよね。

photo_01です。

Giz'Mo:両成敗が止まらなかったりね(笑)。音楽業界が積み上げてきた正解や正攻法ってものがだんだん淘汰されている気がするんですよ。一度行き詰まって、壊しにかかっているというか。ディレクターさんが「今こういうの歌っとくと売れるから」って、とりあえず猫も杓子も“100万回愛しとけ”みたいな時代を経て(笑)。100万回愛したって、100万回キスしたって売れない時代が来て、そしてみんながそれぞれセンセーショナルな言葉とか、今まで誰も使ったことがない言葉を使い始めている時期なんじゃないかな。

ユウキ:あ〜そういう意味だと、UNISON SQUARE GARDENとかもすごく歌詞がおもしろいなぁと思いますね!最近のそういう独創性ある歌詞を作っているアーティストって、誰でもわかるように作ってないからおもしろいというか。みんなに一発でわかっちゃうものを作っていたら、一聴したとき以上の感動って生まれないんじゃないかなぁって。寄せに行ってないからこそ、支持されているんだと思うんですよね。

Giz'Mo:そうだね。簡単にはわからないからこそ、歌詞サイトという存在が世の中に必要なんですよね。気になっちゃうもん、なんで両成敗が止まらないのか(笑)。

ユウキ:ゲスの極み乙女。の川谷さんなんてすごく言葉の使い方がポップじゃないですか。でも実際はアダルトで難しい音楽をやっていて、そこにポンってキャッチーなフレーズを乗せてくるあたりがやっぱりセンスだなぁって。そういうミュージシャンの人にスポットが当たっていることは、何年か前に比べると健全だなぁって思うんですよね。最近、人気のある音楽を聴いて「あぁなるほど、これは支持されるわ」って納得できる機会が増えてきました。

Giz'Mo:だから僕自身も今回こういうアルバムを作っていく中で、ただ若者が手を繋いで歩いているような恋愛を歌うのではなく、「巡愛歌」のような歌詞が書けたんです。自分たちの年齢に合わせた音楽が出来ると言うか。たとえば、僕の好きなフレーズに<就職だってした もう勝手にケンカも出来なくなった 親・親戚も皆 強がってもさ 随分白髪も増えた>というフレーズがあるんですけど、ちょっと前だったら「そんなこと歌っても高校生にはわからないから」って言われて、こんな歌詞は使えなかったと思うんですよ。でも、今30代になってリアルに感じていることをちゃんと綴れる。それを同じ世代や、それを経てきた上の世代の人がわかるなぁって思い、まだそれを感じたことがない若い子たちも「いつか自分にもそういう日が来るのかなぁ」って想像する。それって本当に良い時代だなぁって思います。

では、みなさんのこれからの夢や目標を教えてください。

Giz'Mo:まだデビューしたての頃は「武道館でやります!」とか「紅白に出たいです!」とかよく言っていました。でも、メジャーでやらせてもらえるようになってもう6年目で、もちろんそういう細かい一つ一つの夢は胸の中に持っているんですけど、なんか今は「続けられますように」と、心から願っています。もしかしたら結婚して子どもが出来るかもしれないし、病気になって歌えなくなるかもしれないし、耳が聞こえなくなるかもしれないし、いつ何があるかわからないじゃないですか。そんな中で、来年も再来年も、Jam9であり続け、僕らのことを信じてくれる人たちにずっと音楽を届けられますようにと思います。点ではなく、線で未来を描いていきたいなと最近感じていますね。

photo_01です。

MOCKY:良いこと言うねぇ(笑)!僕は今年で37歳になるんですけど、13年間、人生の3分の1くらいもうJam9をやっているんですよね。2013年の結成10年目のときも「これからも続けていけたらなぁ」ということを話していたんですけど、本当に20年30年、ただこうやって音楽をやって生活できる環境がある限り、続けていきたいなぁと思います。

ユウキ:あとは月並みですけど、またここから10年くらい経って僕らが40代になっても「新しい歌を作りたい」って思う気持ちを持っていたいなぁって。やっぱりこれだけアルバムを出させていただいていると、曲数も増えてきて、こういう曲ってもうあるんじゃないかなって思ってしまうことも結構あるんですよ。でも、長く第一線で活躍されているアーティストさんって、何十年やっても創作意欲が尽きないじゃないですか。B'zの稲葉さんだって、ソロでもどんどん音楽を作ったりしていますし。そういう風に、ずっと音楽を作りたいと思えるバイタリティーを保っていたいと思います。それが一番の目標ですね。

ありがとうございました。では、最後に歌ネットを見ている方へメッセージをお願いします。

Giz'Mo:歌ネットのサイトをご覧になっている方は、きっと何かを探している人ですよね。「お気に入りのあのフレーズ、全体はどんな歌詞なんだろう」とか、「なんか素敵な曲はないかな」とか。そうやって音楽を目で見る形で探せる良い時代になっているので、たくさんいろんな歌詞を見てほしいなと思います。その中で「あ、これ素敵な言葉だな、どんなメロディーがついているんだろう」と、逆辞典のような発想で、いろんな曲に辿り着いてもらいたいと思っているので、これからも音楽をよろしくお願いします!


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