INTERVIEW
「歌詞は、大事なタイミングで救ってくれるもの。」

普段、曲作りはどんな流れで行うのでしょうか。

谷口:曲作りは、デモも何もない状態でメンバーとスタジオに行って、だいたい僕がギターを弾いて、そこにドラムが乗ってきて、各楽器が加わって…というセッション形式ですね。歌詞は一番最後で、楽器隊のレコーディングが録っている時に書いていることが多いので、作詞の作業が溜まっちゃうとめっちゃ大変です(笑)。あんまり日常生活の中で「これは歌詞に使えるな」とか「これをテーマに書こう」とか思いつくこともなくて。歌詞モードに入ると、ひたすら机に向かうのみですね(笑)。

歌詞に対して、メンバーの方から何か感想や意見はあったりしますか?

谷口:いやー、全くないですね、あいつら(笑)。とくに今までは一切歌詞を見せずに、曲が完成してからなんとなくメンバーにも沁み込んでいけばいいかなと思っていました。でも今回は、“僕らの音楽の原点をもう一度”ということと“バンドの足並みを横並びに揃えよう”ということを大切にしていたので、歌詞を事前に送ったんです。まぁ「返信はいらないです」ってつけたんですけど(笑)。やいのやいの言われるのも嫌だし、変にそんな感想を聞くのも恥ずかしいし。ただ、先に歌詞を知っておくだけでも違うかなと。

鮪さんが歌詞を書くときに大切にしていることを教えてください。

谷口:昔からずっと、言葉のハマリとか語感とか、韻を踏むこととか、メロディーやサウンドに対する発音の気持ちよさというのは一番大切にしています。その中でメッセージをバランスよく込めていくので大変ではありますけど、いろいろ言葉を殴り書きながら少しずつ作っていくんです。だから歌詞を書いている時は、大体イライラしてますね(笑)。

最近、何か印象的だった言葉はありますか?

谷口:……“両成敗がとまらない”かな。純粋に面白いフレーズだと思いますね。普通なら繋がらないはずの言葉を繋げるというのは、彼らの発明でもあるので。たとえば「朝が痒い」とか、そういう一見わけのわからない言葉が成立して、オリジナリティーがあるものが生まれるっていうのはやっぱりすごいことですよね。自分はしない書き方なので新鮮です。あと、「ジョジョの奇妙な冒険」というマンガにもそういうタイプの言葉がよく出てきて、面白いなぁと思うんです。

鮪さんはマンガが結構お好きなんですね!先日もTwitterで「一生持っていたい漫画がまた増えた。」というツイートをなさってましたよね。

photo_01です。

谷口:そうなんです!あれは“うめざわしゅん”の「パンティストッキングのような空の下」という短編集のような作品で。絵も好きだし、セリフには詩的なところがあり、ストーリーには哲学的なところがあり、思春期の男子が夢中になりそうなギャグみたいなものもあり。何より、そのキャラクターが発する言葉にちゃんと命が宿っていて、まるで本当に生きているように感じられるんです。そういうのってマンガならではですよね。だから詞を書く人間としても同じように、ちゃんと言葉に命を吹き込まないといけないなって思いますね。

では、自分の“歌詞”とは、鮪さんにとってどんなものですか?

谷口:自分を救うものですね。基本的には身を削って削って書いているんですけど、たまにものすごく救われる歌詞が生まれたりして、全ての苦しみがチャラになるというか…。それは今回のアルバムで言うと「スタンドバイミー」ですし、少し前で言うと「シルエット」という歌詞が書けたことによって、大阪時代からの苦労が報われたような気がしたんです。だから歌詞は、自分を大事なタイミングで救ってくれるものだと思います。

「歌詞がいいなぁ」と思うアーティストはいらっしゃいますか?

谷口:“LILI LIMIT”かなぁ。面白い言葉を使いますよね。ジャケットや歌詞カードもすごく凝っているので、歌詞ってものに重きを置いているんだなぁと感じます。最初に出会った曲が「at good mountain」という曲だったんですけど、まず「これは何を歌っているんだろう?」って引っかかったのが大きかったです。聴いたままスコーンと入ってくる言葉も大事だけど、“ホルモン”の時と同じように、気になって歌詞を読んだときに得る感動や衝撃が自分にとっては大切なんです。

今年の4月からは全国ツアー「KANA-BOONの格付けされるバンドマンツアー 2016」もスタートされますが、ライブの時には何を意識して歌っていますか?

谷口:ちゃんとお客さんの目を見ることですね。地元のライブハウスに出演している頃とか、まだ全然ファンもついてない頃とかは、自分が一生懸命書いた言葉を放っても、誰もこっちを見てくれなかったんですよ。まるで僕らの音楽がBGMみたいで、それが悔しくて悔しくてたまらなくて。でも、徐々にファンになってくれる子ができて、ライブ中に目が合う状況というのが生まれた時、すごく嬉しかったんですよね。だからそのときの感覚をずっと大切にしています。小さい会場でやるときも、大きいアリーナやドームでやるときも、ちゃんと全員の目を見ようという気持ちでやっています。

ありがとうございました。では、最後に歌ネットを見ている方にメッセージをお願いします。

谷口:歌詞をちゃんと見てもらえるってことは、僕らとってすごく幸せなことです。これからも言葉ひとつひとつがどんな意味を持っているのか、自分なりに紐解きながら歌詞をみてくれたら嬉しいなと思います。


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