INTERVIEW
「すごく僕らを頼りにしてくれている人がいるんだなぁって」

では、ここからは3rd アルバム「Origin」についてお聞きしていきたいと思います。今回はどんなアルバムになりましたか?

谷口:今までのアルバムとはガラッと変わった作品になりましたね。一作目の「DOPPEL」から二作目の「TIME」までは“KANA-BOON”のイメージに忠実に作っていたというか、僕たちに求められているものにちゃんと応えなきゃという意識がメンバーそれぞれにあったと思うんです。でも、今回はそこから脱してすごくパワーのある作品になったし、何より自分たちが本当にやりたいことをやることができました。リスナーの方にとってはトリッキーなアルバムに感じるかもしれないんですけど、僕らからしたらすごく素直で直球なギターロックアルバムが出来たなと思っています。

「Origin」というアルバムタイトルはどういったところから生まれたのでしょうか。

谷口:まず、アルバムを作っている最中にメンバーと話し合いをしたんです。「音楽をちゃんと楽しめているか」とか「胸を張れる活動をしているか」とか。でも実際のところ、プロになってからピュアな気持ちで音楽をやれていない部分もあって、それってどうなんだろうって…。とくに“KANA-BOON”というバンドにとっては、メンバーがMAXで楽しんでいないとファンの人も楽しくないんじゃないかと、そういう話になりました。それで、バンドの姿勢を改めようということで「もう一度、純粋に音楽を楽しもう」というコンセプトになったんです。

“起源”や“始まり”という意味である「Origin」は、その気持ちに由来しているんですね。

photo_01です。

谷口:はい。そして、その話し合いをした後にアルバム収録曲の「スタンドバイミー」という曲ができたんです。その歌詞が完成して、このアルバムで切り取る今の“KANA-BOON”ってなんだろうと考えたときに“Origin”という言葉が出てきましたね。起源や始まりを取り戻しに行くバンドの姿勢、というのをこのタイトルにグッと詰め込んでいます。

前作のアルバム「TIME」の時、ナタリーさんのインタビューで「6曲目までがA面、それ以降がB面というような曲順になっていて前半後半でそれぞれKANA-BOONの別の表情が見られる」とおっしゃっていたのを拝読したのですが、今作の曲順にはどんな流れがありますか?

谷口:今回は、1〜3曲目の「なんでもねだり」までがアルバムのオープニングで、軽やかに駆け抜けるイメージです。4曲目の「ランアンドラン」はちょっと特殊な立ち位置で、シンプルなメッセージソングになっています。そのあと5〜7曲目がディープなハードボイルドゾーン、続く「グッドバイ」「革命」の流れも異質な感じはありますね。そして10曲目の「ダイバー」以降がエンディングというか、僕らのコアなメッセージたちであり、そのままの“KANA-BOON”らしさが出ていると思います。だから、前回のような前半と後半という分け方ではなくて、いろんな展開があるアルバムですね。

なるほど。とくに1曲目の「オープンワールド」は、まさにこの作品の世界の入り口が開くような曲ですね。この曲は<目覚ましの鐘の音頭 狭いアパート、鳴るギターの音 譜面と煩悩、泳ぐ目を放とうと海を想う>というフレーズで始まりますが、これは今の鮪さんの日常を描いているのでしょうか。

谷口:1番の歌詞は過去の僕の姿ですね。デビュー前の自分が、バイト生活の中で曲を作っているイメージで、2番が現在の姿なんです。“Origin”というアルバムテーマが見えたので、一曲目から「その原点と比べて今の自分はどうなんだろう」というところを歌いたいと思いました。あと、この曲には<誰でもない君だけのやり方で>というフレーズが出てくるんですけど、これはライブシーンでのお客さんたちに向けた言葉でもありますね。集団的なライブの楽しみ方もいいけど、個として自分なりの楽しみ方を見出してもいいんじゃないかなと思ったりもするので。誰かに対しても、自分に対しても、一番伝えたいのはこのメッセージですね。

そしてラストを飾るのは、アルバムタイトルと同じ「Origin」という楽曲です。この曲にはどんな想いを込められたのですか?

谷口:本当は「スタンドバイミー」で終わっても良かったんですけど、「Origin」で終わったほうがアルバムとしての切れがいいし、聴いたあとにスッキリするかなぁと思って最後に持ってきた曲ですね。この歌詞で歌っている<ナンバーワンのヒーロー>というのは、具体的な誰かじゃなくて“アニメの主人公”みたいなものなんです。たとえば「〜レンジャー」とか「仮面ライダー」とか「週間少年ジャンプ」の主人公とか。僕は歌詞を書く前に、この曲を聴きながらずっと「鉄腕アトム」が空を飛び回っているようなイメージが浮かんでいました。この曲も“初心”に戻るというところから、自分の子どもの頃の気持ちまでさかのぼって歌詞を書きましたね。

では、鮪さんがこのアルバムでとくにオススメしたい曲を挙げるとしたらどの曲になりますか?

谷口:やっぱり「スタンドバイミー」ですね。自分たちがデビューしてから3年間、活動していく中で抱いた<葛藤>も包み隠せずに書けたと思います。今のバンドの気持ちがグッと詰まっていて、このアルバムの核である曲です。これは本当に“KANA-BOON”そのものの歌なので、みんなに広く刺さるかはわからないんですけど、この歌詞が書けたことで僕自身すごく救われました。だから、誰かにとってもそういう存在の曲になってくれたらいいなぁと思うんですよね。あとサウンド面でいうと、「グッドバイ」なんかは挑戦した曲なので新鮮かなと。去年、ネオシティーポップブームの中で僕もいろんな曲を聴いていたんです。その中で“Suchmos”とか好きなバンドも現れて。それでちょっと自分もやってみたいという願望を抑えきれずに、この曲ができました(笑)。

今回のアルバムでは、夢を追っている人や日々の中で戦っている人の追い風になるような楽曲が多いですね!ちなみに最近は、あまりラブソングは書かれませんか?

谷口:そうですねぇ。デビュー当時やインディーズの頃は“ハッピーエンドではない切ないラブソング”ばっかりだったんですけどね。ただ、恋愛の歌が生まれるのって大体別れた時なんですよ(笑)。今はそういうこともないのでねぇ。それよりもバンド熱が高まっているというのもありますし、最近は「頑張る人を応援したい」という気持ちがすごく強くなっているんです。ファンレターとかツイートとかラジオのメッセージとかを読むと、すごく僕らを頼りにしてくれている人がいるんだなぁって感じたりして…。受験だったり、就活だったり、みんなそれぞれ色んな悩みを抱えていて、そういうファンを曲で励ましたいという気持ちから、夢をテーマにしたような歌詞が増えてきました。とくに今回の「Origin」はそういうアルバムになったと思います。これからは自分たちが救われるだけではなく、救っていく存在になりたいという思いが大きいですね。



前のページ 1 2 3 次のページ