INTERVIEW
「桜が咲く季節を100%前向きには受け入れられない人もいる…。」

曲作りは普段、どのように行っているのですか?

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SHIROSE:作曲して作詞してアレンジしてみたいな決まった流れではなく、何かしらの“きっかけ”があって作り始めるんです。僕は睡眠障害がヒドイから、ふと、睡眠がはかどるような曲を作りたいなぁと思いついたり。じゃあ、良く眠れる曲のテンポや言葉や歌い方ってどういうものだろう?と考えていきます。例えばお経って、聴いているとすごく眠くなってくるじゃないですか。あれって科学的に証明が出来ていて、眠気を誘う周波数が流れているらしいんです。だからその周波数を自分の曲にも取り入れて、科学的な眠れる根拠もある曲にしよう、とかそういう思考の順番で生まれることが多いですね。

“嘘の中で苦しんでいる人”のためであったり“眠れない人”のためであったり、曲を書くときには具体的な対象がいるのですね。

SHIROSE:そうです、誰に何を届けるかということがいつもはっきりしていて、それが曲になっていくイメージですね。だからまずシチュエーションを考えることも多いと思います。今日もこのインタビューの1時間くらい前まで曲を作っていて。昨日、めっちゃ雪が降っていたじゃないですか。でも会社に行かなきゃアカンくて、前日も残業で深夜まで働いていたのに6時半に起きて、小走りで駅まで向かったのに電車は運休…みたいな。その上、会社に「遅れます」って連絡したら「なんで遅れんねん!」って怒られたり(笑)。そういう最悪な気分での電車の待ち時間ってありますよね。そんな時にその人が聴きたい音楽などを想像して作るのが好きなんです。

では、ここからは“卒業”をテーマにした新曲「咲かないで」についてお伺いしたいと思います。まずタイトルから刺さりますね。

SHIROSE:この曲も学生時代の日記をさかのぼって作った曲なんですよ。願掛けで「綺麗に咲いてほしい」とか思う人もいるとは思うんですけど、咲いてしまったら卒業の時期が来てお別れじゃないですか。僕なんかは桜が一生咲かないでほしいなと思ってましたけどね。

NIKKI:私は初めてこの曲を聴いたとき泣いてしまいました。もう最初のフレーズから、何かに向かって頑張っている人には刺さるだろうなぁと。1番を歌うSHIROSEに対して、自分は2番をどういうふうに歌おうかと考えたときにも、親のこととか周りで頑張っている人のことがすごく頭に浮かんできたし、レコーディングをしていても涙が出てきました。WHITE JAMは3人とも曲を作るんですけど、とくにSHIROSEの曲は一番最初からグッとくるものが多いんですよね。

GASHIMA:卒業ソングって<必ず僕たちはここでまた会えるよ>とか<明るい未来が待ってるよ!>みたいなポジティブな歌詞が多いじゃないですか。でも正直、自分は小学校を卒業してからすぐにアメリカに行かなければならなかったので新しい生活が楽しみな気持ちより、大好きな仲間を失う恐怖の方が大きかったんですよね。その時の、世界が終わってしまうような感情をこの曲で思い出しました。学生に限らず、そういう気持ちって大人になってからもあると思うんですよ。就職とか結婚がきっかけで誰かが遠くに行ってしまうこともあるし、桜が咲く季節を100%前向きには受け入れられない人もいるだろうし。もちろん相手にとってめでたいことだから笑顔で送り出したいとは思うけど、心の中では淋しさや不安を押し殺しているような。そういう気持ちをキレイゴトじゃなくしっかり歌いたいなと思いましたね。

皆さんには、忘れられない卒業式エピソードはありますか?

SHIROSE:めっちゃありますよ!まず卒業式ってやっぱり泣くじゃないですか。でも僕は「絶っ対泣かへんぞ」って思ってました(笑)。後輩や友達がくれる色紙も一枚に収まらず「書ききれなくてたくさんになっちゃいました」とか言ってくれてすごく嬉しかったんですけどね。学生時代に僕がいた部活は、もともと同好会からはじまって、顧問の先生もいなかったようなところで。でもそこからみんなで全国を目指した結果、行くことができたんです。そういう青春を一緒に味わってきた仲間との別れって、本当に世界が終わってしまうくらい悲しいことでしたね。今でもその頃の感情や体験が曲になっていることがかなり多いです。

NIKKI:私は…そうですねぇ…。大好きな先輩が卒業してしまう時、第二ボタンが欲しかったんですけど、結構モテる人だったので上着のボタンは全部売り切れてしまっていたんです。でもどうしても欲しくて、下のズボンのボタンをもらったことがありますね(笑)。ホックが付いていたので「いいよ」ってくれました。今でも母が家に飾っていると思います(笑)。

GASHIMA:さっき、中学の時にラップを始めたって言いましたけど、実は小学校の時から大村君という友だちとギターの弾き語りみたいなことをやっていたんですよ。お楽しみ会とか卒業パーティーとか学校の行事があるたびに二人で歌ったりして。小学校卒業後に僕がアメリカへ行くことになったのは親父の転勤のためだったんですけど、日本に残るか迷っていたら親父に「音楽やるんだったら一緒に来いよ」と言われ、その大村君とやっていた音楽がきっかけでついて行くことを決めたんです。卒業式には、大村君とタイムカプセルを埋めましたね。二人ともギターのピックを手紙の中に入れて「二十歳の時に俺らこれ開けに来て、そのときお互い絶対に音楽を続けていような」って約束をしたのが思い出です。アメリカに行って心が折れそうになった瞬間もあったんですけど、音楽を続けるというその約束を守るために生きていました。ただ…中学が始まって一ヶ月で大村君は僕が好きだった女の子と付き合っていたんです(笑)。かなり複雑な気持ちでした(笑)。

それは…美しい思い出と苦い思い出が半々ですね(笑)。では、学校に限らず何かを“卒業”して新しい道へ進むときに大切なことは何だと思いますか?

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SHIROSE:これはあくまで僕が大切にしていることなんですけど、卒業する前に試せることを全部やりきったかどうか考えることですね。やっぱりやり残したことで10年後に後悔とか絶対したくないじゃないですか。だから思い当たることをすべてリストアップして、やり尽くします。

そういえば、子どもからの卒業である“成人の日”にSHIROSEさんがツイートしていた「安心して下さい。あと五年は子供です。ただあと五年すると、びっくりするほど誰も叱ってくれなくなります。」という言葉が印象的でした。

SHIROSE:あ〜自分自身もそうでしたし、世の中を見ていてもそう思いますね。20歳なんてまだまだ子ども扱いだし、「アカンで!」って叱りやすいですもん。やっぱり大人になればなるほど周りがイエスマンばっかりになっていきますよ。だからこそちゃんと叱ってくれる人って大切だし、僕もそういう風に人と向き合うようにしてますね。言われた方は「なんでお前に言われなアカンねん」って思うかもしれないんですけど、それを続けていくうちにいい関係になっていけると思うんです。あと、25、6歳ぐらいまでに出逢った友だちとそれ以降に出逢った友達ってどっちが良い悪いじゃなくてちょっと違う気がしません?25、6までは完全に直感というか、右脳で友達を選んでいるんですよ。でもそれ以降の友達というのは左脳で選んでいると思います。大人になると脳みその使い方が変わるんじゃないですかね。

GASHIMA:せやな、僕も25歳を超えてからなかなか友達ができなくなりましたね。

SHIROSE:だから僕は一週間に必ず3人は新しい人に会うようにしているんですよ。今って、インターネットがあるから世界がすごく狭くなっているなぁと思うんですけど、その狭さを利用して自分の会いたい人に会える時代だと思います。三日前くらいに会った脳科学の先生も面白かったですし、中には、どういう思想でこうなってしまったんだろうって思うくらいかなり変わった10代の子とかもいます(笑)。あとホームレスの人の話を聞いたりするのも好きですね。元社長で元年商何億という人が結構多くて、成功の理由も失敗の理由もどちらもわかっているのでためになるんですよ。そうやってなるべく子供心と大人心を良いバランスで使って生きていけたらいいなぁと思ってます。



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