10年がギュッと詰まった2枚のベストアルバム!

 2003年に結成された“Aqua Timez”!2005年8月にリリースされたインディーズ1stミニアルバム「空いっぱいに奏でる祈り」の収録曲「等身大のラブソング」が注目され、大ヒット!2006年4月に2ndミニアルバム「七色の落書き」でメジャーデビュー、同年7月に現在の5人編成に。以降、「決意の朝に」「千の夜をこえて」「虹」をはじめ、数々のヒットソングを生み出してきました。

 そんなAqua Timezは、今年でCDデビュー10周年!8月25日には、10th Anniversary Best「RED」「BLUE」が2枚同時リリースされます。メンバー自らが「RED」のイメージに近い曲、「BLUE」のイメージに近い曲に振り分けて選曲。今回のアルバムで初収録となる新曲「濃霧のち」にも注目!バンドの10年を振りかえると共に、どんなに流行が移り変わっても「自分はやっぱり言葉の人間でいたい」と語るボーカル・太志の歌詞へのこだわりについてとことんお伺いしました! 
最後までII 作詞:太志 / 作曲:太志
自分の力で叶えられるかもしれないことを 神様にお願いしちゃだめだよ
汗かいて べそかいて もうダメかもって思うまで 走ってみよう
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INTERVIEW
「等身大のラブソング」だけど、“等身大”ではいられなかった

Aqua Timezさんは、インディーズデビュー後にリリースしたアルバムに収録されていた「等身大のラブソング」が爆発的に人気となり、一気にその名を広めました。今年の8月24日にCDデビュー10周年を迎えられましたが、活動を振り返ってみていかがですか?

太志:デビュー当初は、実力とは関係なく自分たちの曲がマーケットに広がっていってしまったような感覚がありましたね。タイトルは「等身大のラブソング」だけど、“等身大”ではいられなかったというか…。まず、最初に出たテレビがミュージックステーションだったんです。まだ右も左もわからない中で、生放送の歌番組に出ることになるなんて思いもしなかったですね。そういうところから始まっていったので、背伸びせざるを得ませんでした。そこから、徐々に徐々に、等身大の自分たちになっていけたような10年間だと思います。だから今が一番、自分の歩幅で歩けているし、本当の意味で進化している気がします。

「等身大のラブソング」があれだけヒットしたのには何かきっかけがあったのでしょうか。

太志:有線やFMラジオで少しずつ曲が広がっていって…という感じでした。まだシングルも出していないインディーズアルバムの中の1曲で、僕らもどれをリード曲にするか決めていたわけではなかったんですけど、そのとき周りにいた大人たちが「これが良いと思う」と意見をくれたんです。でも自分は、何が人の心に届くかもわかっていなかったから「これがいいのかなぁ…」って思っていました。だから、自分たちだけでリリースをしていたらあそこまで広がっていなかったかもしれませんね。

太志さんは、他のインタビューで「Aqua Timezはしばらくこの曲のイメージがかなり強かった」ともおっしゃっていますが、今回リリースされるベストアルバム「RED」と「BLUE」を聴いてみると“俺”と“お前”という表現をしているのは「等身大のラブソング」だけだということもあり、逆にAqua Timezとして異質な楽曲だという印象を受けました。

太志:そうですね。本当はあの頃も今も“俺”っていう表現はあんまり使わないんですよ。だから振り返ってみると、ノリで作った感があります。カノン進行で、裏のリズムで、ラップっぽいものなのであまり音程の波もないし、難しい曲ではないんです。そういうノリで作った曲があれだけ支持されて、すごく凝って作ったものがなかなか理解されなかったりってことはありますよね(笑)。

正直もう「等身大のラブソング」は歌いたくないと思う時もありましたか?

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太志:あー…、「歌いたくない」って言う自分が好きな時期はありました(笑)。でも、今の本心で言うと、その曲を聴いてAqua Timezというバンドを知ってくれた人がたくさんいるので、そんな幸せなことはなかなか無いなぁと思います。あれが最初のチャンスでしたね。

よく1曲売れると次が大変と言いますが、Aqua Timezさんは次々とヒットソングを生み出していますよね。10年の中でスランプ期もあったのでしょうか。

太志:以前、歌ネットさんでインタビューを受けた2009年頃がそうだったかもしれないです。あんまり間をあけずにシングルを出していた時期があって、そのときに次は何を作ればいいんだろう…ってわからなくなったんですよね。やっぱり枯渇するというか、自分の中に持っているものは有限なので、もっといろんなものを自分がインプットしないと、アウトプットはできないんだなぁと思いました。最近はアレンジャーをつけるようになりましたが、その時はバンド自身でアレンジもしていたので、かなり自分たちを追い込んで曲を作っていました。今は、曲作りのペースをそこまで詰め込まなくなったので、いい意味でゆとりが出来てきたと思います。

では、10年の中でAqua Timezが貫いてきたこと、逆に変わってきたことを教えてください。

太志:貫いてきたことは、他の人には絶対に書けない歌詞を書くという気持ちで曲を作ることですね。メロディーもそうですし。自分なりの“Aqua Timez節”みたいなものがあったらいいなぁと思うんです。だから「Aqua Timezっぽいね」って言われることはすごく嬉しいです。変わってきた面では、最新シングルの「最後までII」もそうなんですけど、やさしい曲より、もっともっと強い曲を作りたいと思うようになってきたことです。頑張っている子たちの背中を押せるような。癒しはその先でいいんじゃないかなって。そのためにも自分がもっと頑張らなきゃなと思います。

何故、強い曲を作りたいと思うようになってきたのでしょうか。

太志:Aqua Timezって、最初は“流行りもの”として扱われていたと思うんです。でも、そうじゃなくなったとき、結局自分たちを何が一番進ませてくれるかというと「頑張ること」しかないんじゃないかなって。それはミュージシャンじゃなくても、部活をやっている子でも、仕事をしている人でもみんな同じで、頑張るしか道はない。時代をもう一度取り戻すこともできないし、“流行”は生き物みたいなものだから僕らが動かすものでもないので、それを気にするよりも、「頑張っている人の音楽」を強く提示していきたいなと思うようになったんですよね。

この10年の間に音楽シーンの流行も大きく変わりましたよね。最近はJ-POPの“歌詞力”が落ちてきているような印象も受けるのですが、太志さんはどう感じますか?

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太志:うーん、もちろん良い歌詞を書くやつもいるとは思うんですけど、単純に音楽として楽しむって方向に向いている人が増えてきたんじゃないですかね。例えば、4つ打ちで楽しくその場をロックするって、それはそれでものすごいエネルギーだと思うし、憧れるところもあります。でも、自分はやっぱり言葉の人間でいたいですね。10代の頃にミスチルとかスピッツの曲を聴いて「あぁ、歌詞ってすげぇなぁ…」って感じたあの気持ちを今だに忘れてないです。

昔と比べて、太志さんが作詞の面で意識的に変化させたことはありますか?

太志:以前は、ラップものが多かったこともあり、100言いたいことがあったら100書いていたんですよ。でも今は、歌もの寄りになってきましたし、あえて余白を残して聴き手の想像力に委ねるところはありますね。全部説明しないことの美しさってあると思うし。本当にたった一文で人を揺さぶることってあるじゃないですか。それこそ自分は中3の時、ミスチルの「名もなき詩」を聴いて、まだ中学生だから愛のことなんてわかってないのに、“愛はきっと奪うでも与えるでもなくて 気が付けばそこにある物”というフレーズがメロディーに乗っていることの凄さを感じました。その感覚への憧れがあるんですよね。

「歌詞に対して恥ずかしがっている場合じゃない」

今回のベストアルバム「RED」「BLUE」というタイトルは、今までのAqua Timezさんのアルバムタイトルのなかでもシンプルですね。

太志:年を重ねるにつれてシンプルになってきましたね。選曲も、「RED」は温かくてハートウォーミングなもの、「BLUE」は冷たくてエッジの効いた尖ったものをフィーリングで選びました。

「RED」は、とくにラストを飾る2曲から共通のアツいメッセージを感じました。14曲目の「because you are you」のタイトルは、“あなたがあなただから”という意味ですし、15曲目の「ゴールドメダル」には“君より君らしく 生きられる人はいない”というフレーズがあり、「RED」のコンセプトをより確かなものにしていますよね。

太志:この2曲は最近のアルバム曲でシングルにしてもよかった曲ですね。ここに込めたメッセージって自分にとっても大切で、ずっと歌っていかなきゃいけないことだと思います。「自分らしさ」なんて言うと、そんな時代錯誤な…みたいなドライな風潮があるじゃないですか。そこに若い子たちに負けてほしくないというか、アツい大人になってほしいんです。親からもらったものや個性を隠す時代になっていくのは嫌だなぁと。

なるほど。当たり前のことなのに「自分らしく」っていうのが実は一番難しかったりしますよね。

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太志:そうですね。あと、人間って人の目とか何にも気にしないときが一番素敵だったりもするんですよね。僕もライブをしていて思うんですけど、ステージに立って格好つけようと思うと、失敗するんです(笑)。楽屋にいる時のほうが生き生きしていたりして。そういう素のシーンを撮ってもらったものを、ファンの人がいいって言ってくれたりもします。だから格好つけたり、自分が理想だと思っているものだけが良いわけではないんだと、気づいてほしいなぁという思いも込めました。

「RED」の中で、想い入れの強い楽曲を挙げるとするとどの曲でしょうか?

太志:うーん、「小さな掌」はすごく僕らにとって大きな存在の曲ですね。

“何もかもうまくいく時ではなく 何もかもうまくいかぬ時にこそ 人は大切な存在に気付くのでしょう”という歌詞、キラーフレーズですね。

太志:うまくいっている時って、みんな集まってくるじゃないですか(笑)。でも、ダメになったときにいなくなる人もいっぱいいるし、それもその人の人生があるからいいんだけど、それでも残ってくれる人が本当の仲間ですよね。一番キツイときに、「あー今、俺こんなにダメなのに、ひとりぼっちにならなくてもいいんだ」って思わせてくれる人がいるって気づけることが幸せだなぁと。人生の中で当たり前のように見過ごしてしまうメッセージかもしれないけど、本当の意味での感謝を歌えたのはこの曲が初めてでしたね。

「BLUE」の12曲目には新曲「濃霧のち」という楽曲が収録されています。この曲はどのようなイメージで作られたのですか?

太志:これは今の自分のことかもしれないです。ドラクエのようなRPGって「にげる」とか「たたかう」のコマンドを選ぶじゃないですか。この曲では、いろんなことから逃げて逃げて生きてきた幼い頃の自分と何度もすれ違うんですけど、もう「たたかう」を選ぶしかないっていうのが今なんですよね。例えば、昔はマラソン大会とか、嫌なことからは全部逃げてたので、いつもめっちゃ怒られてました(笑)。でも最近は、それを取り戻すかのように自分で5、6キロ走るようになりましたね。誰に言われるわけでもなく、大人になってからやっと「たたかう」を選ぶようになったんです(笑)。

この曲の最後にある「準備は整った」にはどんな意味が込められているのでしょうか。

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太志:僕らにとってという意味ではやっぱり“10周年”のことですね。アニバーサリーをお祭りとしてみんなと祝いたかったという気持ちもあるんですけど、それだけで終わってしまっては意味がないのでそれを準備として、ここから、これからの10年をスタートさせるという想いがあります。

では、「BLUE」の中で、想い入れの強い楽曲を挙げるとするとどの曲でしょうか?

太志:「手紙返信」かなぁ。これは、ファンの方から頂いた手紙の返信を書きたいと思って作りました。傷つきやすい子たちに負けてほしくないなって…。あと、手紙を読んでいると、中には恋人が交通事故に遭って足を切断することになってしまったという方もいるんです。そういうのを読むと、音楽で出来ることってすごく微力だなぁとも思うんですけど…。その子の手紙に「でも私はこの人と結婚するんです。絶対、幸せにしようと思います」と書いてあるのを読んで、なんか泣きそうになってしまって…。自分が歌詞に対して恥ずかしがっている場合じゃないなって思ったんですよね。生きることに直面したら、どれだけ恥ずかしいこと言ったって良いんだよって伝えたかったんです。みんな生きていく中でいろんなことがあるけど、少しでもその子たちが強くなれたらという想いを込めて作った曲が「手紙返信」ですね。

「誰にバカにされても、俺の宝物だなって」

太志さんの楽曲には、語りかけるような歌詞が多いですが、昔の曲を歌っていて、過去の自分に語りかけられているような気持ちにもなりませんか?

太志:なりますなります!自分の歌詞に叱られるような(笑)。これだけのことを歌っちゃってますからねぇ。でも、歌のようには生きられない自分もわかっているし、その理想をなくすつもりもないからこそこれからも歌詞を書いて、歌い続けていきたいなぁと思うんですよね。10周年ライブツアーの時にもそれは感じました。やっぱり受け取ってくれる子たちの目が本当にキラキラしていて、これはもう誰にバカにされても、俺の宝物だなって。

以前、「歌詞を書くときに大切にしていることは?」という質問に「“思い”って出すものじゃなくて、こぼれるものだと思うので、自分の経験をいかに言葉にできるかということを大切にしている」という答えを頂きましたが、今はいかがですか?

太志:そのこぼれてきた想いをすぐiPhoneにメモ保存することを大切にしてます(笑)。とにかく言葉フェチなので、イメージが沸いたらすぐにメモして、いっぱいになったらパソコンのメールに送って“歌詞ファイル”に保存しておくんですよ。そういう歌詞へのモチベーションも下がってないし、まだまだ零れてくる想いがたくさんあることは良いことだなぁと思います。

どんなときに一番言葉が湧いてくるのですか?

太志:意外と一番多いのは、人と話している時ですね。そこで自分がポロっと言った言葉を「あ、ちょっと待って」って会話そっちのけでi Phoneにメモすることがしょっちゅうあります。もう歌詞のために生きているかのようです(笑)。あと、友達と飲みに行ったりすると、最初の1〜2杯はいいんですけど、だんだん“歌詞モード”に入るんですよね。その時がチャンスで、酔っていると言葉が歌詞に寄っていくんですよ!歌詞ってちょっとクサい言い回しとかあるじゃないですか。僕は、ちょっと恥ずかしいくらいのものや、めちゃめちゃ曝け出す瞬間を切り取ったものが歌詞だと思ってるんですよね。だから、友だちと飲みに行くっていうのは、僕にとって取材のようなものです(笑)。

メンバーの方は、歌詞についての感想をくれたりしますか?

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太志:こういうインタビューを5人で受けたときに初めてどう思っていたのか聞くことが多いですね。普段は、感想も言ってこないですし、自分でも聞かないです。でもこないだ面白かったのは、曲も全部出来上がって、仕上げのマスタリングの段階で、OKP-STARが歌詞を読んで「あー、こういう歌詞だったんだ!」って(笑)。

(笑)。でも、インタビューなど拝見すると、OKPさんが一番太志さんの歌詞を褒めていらっしゃいますよねぇ。

太志:そうそう、彼が一番買ってくれてはいるんです。デビュー前から「太志は良い歌詞を書くし、良い曲を書くから、もっといっぱい作るといいよ」って言ってくれていて。俺は彼の言うことを信じて「俺はできる、できる」って思い込むことで、最初は書き続けてこられたようなところもあるんです。それなのに、そのマスタリングのときに「あぁ…これが現実なんだ」と思いましたよ(笑)。

太志さんにとって歌詞を書くこととはどんなことですか?

太志:もう歌詞を書くことが無くなってしまったら、逆に毎日何をするんだろう?ってくらい日常の一部ですね。日々を言葉にして切り取ることが自分の仕事だと思っています。

歌詞が良いなぁと思うアーティストを教えてください。

太志:BUMP OF CHIKENとかRADWIMPSはやっぱり圧倒的ですよね。特に野田君(RAD)の「オーダーメイド」を聴いたときには「おー、すげぇ良いなぁ」と。あと米津玄師くんの作る曲には、メロディーも含めて、素敵な音楽がまだまだ出てくるんだなぁと感じますね。

では、Aqua Timezはこれからどんなバンドになっていきたいですか?

太志:8月16日の武道館で10周年ツアーファイナル、終わっちゃいましたけど、もっと強いツアーバンドになりたいですね。これから47都道府県ツアーもありますし、その場所に住んでいる子たちに、ライブで歌詞を伝えていきたいなって思ってます。10年後もそうありたいですね。

最後に、歌ネットを見ている方にメッセージをお願いします。

太志:僕も歌ネットユーザーです。スタジオの中で自分の歌詞を見させてもらっています(笑)。自分の曲だけじゃなく、歌詞をちゃんと読んでくれる人がいることや、ネットで歌詞を読むっていう文化があることがまず嬉しいです。これからも自分で歌詞を書いていくんで、もし、それを読んでいいなぁと感じてもらえたら是非、ライブに来てもらえたらと思います!